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最近でこそ北野武監督の名前が世界にしれわたっていますが、日本の映画を世界の知らせたのは、黒澤明監督です。

先日テレビ座談会で、ある俳優達が黒澤映画の思い出を語り合っていました。心から感心したのは、ある俳優が「黒澤監督は何も教えてくれないのです。繰り返し演技をさせ、黙ってそれを見ては、ダメ出しをするのです。たった二、三分のシーンを二日も三日もかけてとることは珍しくなかった」と。


監督が俳優に演技をつけるのは、普通のことです。しかし、教えた演技では、その俳優の本当の演技、本当の力にはならない。だから黒澤監督は黙って見続けたのでしょう。

我々、普通の人間には、未熟な人が繰り返し試行錯誤するのを黙って見守る度量はありません。まして、日常の仕事には、それだけ時間をかける余裕がありません。

何度も何度も挑戦しているうちに、ふっと可能性の扉が開く瞬間があるのかもしれません。それまで、絶対に不可能だと思い込んでいたようなことも、その瞬間に光が差し込むように可能になることがあると言うことを黒澤監督は待っていたのでしょう。でもそれは偶然ではないと思います。あまり当たり前すぎて誰もが試みなかった方法で成功するのです。さまざまな発想を繰り返しあの手この手で試したあげく、ふっと思いつくのかもしれません。


「成功は、しばしばあっけなくもたらされるように見えることがある。だが、水面下には必ず、累々とした失敗体験が潜んでいるはずだ」・・・斉藤茂太