私の家族二人が鉄欠乏性貧血なので、いろいろ試行錯誤してきました。対策は食事が中心ですが、薬やサプリも必要に応じて摂取してきました。ただ、薬ではこれは!というような良いものに出合ったことがないです。

その鉄欠乏性貧血になる原因として、(1)胃や十二指腸の潰瘍・炎症・痔・癌などによる消化管からの出血、月経による出血(出血=ヘモグロビンとして鉄が失われます)、(2)偏食による食事からの鉄分の摂取不足、(3)胃切除などによる吸収障害、(4)からだの成長や妊娠に伴う鉄需要量の増大などがあります。

特に食事で鉄分を摂る事が大切で、一日のうちにレバーやほうれん草など、鉄分を多く含む食品を摂って、加えて大豆や肉、魚などのたんぱく質を摂るようにすることが必要です。

いつもインスタント食品だけで食事を済ますことは避けるべきです。温野菜やフルーツなどを食事の中に取り入れましょう。バランスのよい食事をすること、鉄分の吸収を助けるビタミンCを摂ることが、鉄分を効率よく摂ることにつながります。

症状が重いときは数ヶ月ほど鉄剤を飲むことも必要になります。どうしても辛いときや重い貧血がある場合は、鉄剤を処方してもらうことを選択肢です。鉄剤は、体に必要な鉄分を粉状にしたもので、食品より確実に鉄分を吸収することができるのです。ただ、まれに、気持ちが悪くなるなどの副作用を起こすことがあったり、緑茶やコーヒーなどとあわせて飲むと、鉄分の吸収を妨げることがあるので、処方箋にしたがって服用するようにしましょう。

【アスリートは貧血を起こし易いので注意が必要です】
激しいトレーニングを続けるアスリートは体内の鉄需要が増加する一方で、汗や消化管から鉄の排出量が増え「鉄欠乏性貧血」をおこしやすい状態にあります。一般の人より食事量と内容に気をつけていないと鉄の供給が追いつかず鉄不足になりやすいので、注意が必要なのです。

【アスリートはパフォーマンスへの影響がある】
貧血で体が酸素不足になると、有酸素運動の能力が低下するので持久力が下がります。また、だるくなったりして競技パフォーマンスに影響が出たり、いつもできていた練習が思うようにこなせなくなったりもします。陸上長距離など持久系記録競技では、記録低下として如実に現れます。普段の練習がきつい球技系競技では、貧血になっても異変に気づきにくいこともあります。以前のような調子が出ない、一生懸命練習しても記録が横ばい、低下が続くというときは貧血を疑ってみましょう。

【スポーツ性貧血について】
運動というと、病気を防ぎ、健康的を維持するための肉体をつくるためのものというイメージがあります。しかし、運動することによって貧血を引き起こしてしまう「スポーツ性貧血」というものが存在するのです。スポーツ性貧血は、血中の赤血球の数やヘモグロビン濃度が下がってしまう状態のことで、女性選手は月経の影響もあるため、男性選手の3倍多いといわれています。スポーツ性貧血のなかでもっとも多いのは鉄分不足による鉄欠乏性貧血です。一般的に鉄欠乏性貧血は男性に少ないのですが、男性スポーツ選手の貧血は鉄分不足によるものがほとんどです。次いで多いのが、足底を激しく打ちつけることで赤血球を壊してしまう溶血性貧血。これはマラソン、バレーボール、バスケットボールの選手などに多いといわれています。

【スポーツ性貧血の対処法】
スポーツ選手の場合は、一日あたり20〜30mgの鉄分を積極的に摂取が必要と言われています。これは、スポーツをしていない人の約2倍の量です。食品でいえば、吸収率の高い「ヘム鉄」を多く含んだうなぎ、レバー、煮干し、あさりなど。「非ヘム鉄」切り干し大根、ほうれん草などはビタミンCと一緒に摂って、吸収率を高めてください。

また、大事な事は、赤血球の合成を助けるタンパク質、ビタミンB6、B12、葉酸、セレンなどもしっかり摂る事です。赤血球の膜の酸化を予防するために、ビタミンC、E、ポリフェノールなど抗酸化剤を補給することもお勧めです。栄養バランスの整った食生活をベースに、不足分はサプリメントなどを利用するのもいいでしょう。

【鉄欠乏性貧血から鉄過剰症、ヘモクロマトーシスにつながる悪循環】
筋肉が増加する思春期や青年期などの時期は、鉄の必要量や発汗量が増える。発汗が増えれば鉄の量も増え、女性は月経による出血もあるため鉄が失われやすい。特にマラソンや駅伝、サッカー、バレーボール、バスケットボール、剣道などの種目は、何度も足を強く地面に踏みつけ、足底の毛細血管に衝撃が加わることから、赤血球が破壊されるため鉄が失われやすいのです。

赤血球の寿命は約120日です。壊れる赤血球の数が作られる数を上回れば、赤血球が減少する。これが鉄欠乏性貧血の主原因です。貧血鉄欠乏性になると、疲れやすい、だるい、力が入らない、集中力が続かない、練習が苦しい、記録が伸びないなどの症状が出ます。例えば、マラソンや駅伝などの長距離選手は、太らないように食事制限することが多いのですが、そのためにますます鉄が不足して鉄欠乏性貧血になりやすいのです。食事制限すれば、偏食による食事バランスの悪化やダイエットによって鉄が不足するので、鉄分サプリメントや静脈注射による鉄剤の過剰摂取に陥りやすくなってしまいます。

競技大会が近づくと、即効性の高い鉄分サプリメントや鉄剤注射に依存するアスリートが増えますが、一日当たりの鉄の上限量は、男性が50mg、女性が40mgで、安易な鉄剤依存は避けなければならないのです。
鉄剤の過剰摂取や静脈への鉄剤注射が習慣化すれば、体内には鉄の排出機能はないので、肝臓、心臓などに鉄が過剰に蓄積してしまい、重篤な臓器障害であるヘモクロマトーシスを引き起こすことにつながるためです。

ヘモクロマトーシスとは、体内の鉄が異常に増加し、肝臓、膵臓、心臓、皮膚、関節、下垂体、精巣などの臓器に過剰に鉄が沈着する鉄蓄積症です。このようにアスリートは、貧血が起こりやすい条件と鉄を摂りすぎる状況のジレンマから逃れられない場合もあります。その結果、鉄欠乏性貧血から鉄過剰症へ、鉄過剰症からヘモクロマトーシスへという悪循環を繰り返している例が見られます。

【鉄剤の過剰摂取や静脈への鉄剤注射の連鎖を断つためにすべき事】
この悪循環の解決に日本陸連が乗り出しています。安易な静脈への鉄剤注射は体内の鉄過剰状態を引き起こして非常に危険であり、体調が悪いという訴えだけで鉄剤の過剰摂取や静脈への鉄剤注射に走ってはならないと強く警告しているのです。

また、ロサンゼルス五輪女子マラソン代表でスポーツジャーナリストの増田明美さんは、鉄剤を摂取して血中の鉄の数値が上がれば、「主食を抜いても構わない、食べなくても大丈夫」と思い込む危険性が高いと指摘していて、全国高校駅伝出場チームの全選手に血液検査を科すべきだと提案しています。さらに、第一生命の山下佐知子監督は、成長期に鉄剤に頼って走ってきた選手は体ができていないし筋肉の質や骨が伴っていないので実業団の練習に耐えられない選手が多い、鉄剤の過剰摂取や静脈への鉄剤注射を解決しなければ長距離の未来は危ういと訴えています。

日本陸連は、静脈への鉄剤注射に関してはこれまでは現場任せだったが、女子マラソン再建のためには放置できない課題と危機感を募らせて、アスリートの健康確保のため、貧血の予防・早期発見・適切な治療をめざす「アスリートの貧血対処7カ条」を採択。鉄剤の過剰摂取の警告文書を各都道府県協会を通じて配布しています。

【アスリートの貧血対処7カ条】
1食事で適切に鉄分を摂取する。
2鉄分の摂りすぎに注意する。
3定期的な血液検査で状態を確認する。
4疲れやすい、動けないなどの症状は医師に相談する。
5貧血の治療は医師とともにする。
6治療とともに原因を突き止める。
7安易な鉄剤注射は体調悪化の元凶である。

【ヘモクロマトーシス】
ヘモクロマトーシスは鉄代謝異常による疾患です。鉄は生体に必要不可欠 な元素である一方で、過剰に存在するとラジカル産生を容易に引き起こし、心不全、不整脈、肝不全、内分泌・発育障害、発がんなどの重篤な臓器障害を呈する ため、生体内で鉄は厳密に制御されています。しかし、何らかの原因によってこの調節が崩れ、異常に増加した鉄が諸臓器の実質細胞に過剰に沈着し、その結果、細胞傷害、組織障害、臓器機能不全をもたらす病気がヘモクロマトーシスです。

欧米では遺伝性ヘモクロマトーシスが非常に多いのですが、本邦では極めて稀です。近年、本邦においてヘモジュベリン、トランスフェリン受容体2ならびにフェロポルチン1遺伝子異常を持つ家系の存在が明らかとなりましたが、未だ正確な患者数は把握できていません。逆に、本邦では輸血後鉄過剰症がほとんどを占めますが、その正確な患者数も明らかではありません。

その成因から大きく特発性と二次性に分けられます。特発性とは、生体内 の鉄代謝に関与する各種の遺伝子(HFE、ヘモジュベリン、ヘプシジン、トランスフェリン受容体2、フェロポルチン1)の異常に基づく遺伝性ヘモクロマ トーシスを主に指します。また、二次性とは、もともと鉄代謝に関しては異常がないのですが、例えば頻回で大量の赤血球輸血に起因する輸血後鉄過剰症や、大 量の飲酒などによる鉄の過剰摂取などが原因となって引き起こされるものを指します。

組織学的に鉄の沈着が認められても、症状が現れるまでに20〜40年を要するため、40〜60歳での発症が多くみられます。臨床的には肝硬変、糖尿病、皮膚色素沈着、心不全などが主徴として認められます。肝不全や心不全は死亡原因の主なものになります。これらの症状に加え、甲状腺・副甲状腺・下垂体の機能低下や性機能低下などから性欲減退、陰毛・体毛の脱落、無月経、睾丸萎縮などが現われます。さらに中指骨及び手関節、膝蓋、肩及び腰部に有痛性の関節症も高頻度に現われます。肝細胞癌を合併することもあります。

ヘモクロマトーシスの治療は、臓器に沈着した鉄を除去する治療と、鉄沈 着により生じた臓器障害に対する対症療法とに分けられます。鉄の除去方法には、瀉血(しゃけつ:体内から血液を大量に抜く方法)と鉄キレート剤(鉄排泄促 進薬)投与のふたつがあります。瀉血は最も効果的でありかつ安価です。瀉血による血液喪失によって軽度の貧血状態になりますが、これにより造血が亢進する ために臓器に沈着していた鉄が血液中に動員され、結果臓器中の鉄の減少が期待できるものです。

一方、鉄キレート剤投与による鉄そのものの積極的な排泄療法 は、鉄を捕捉する薬剤デスフェリオキサミンが使用されていました。皮下注射ないしは静脈注射で投与し、鉄の尿中への排泄促進を図るものですが、薬剤の半減 期が短いため、十分な効果を得るためには連日の持続投与が必要です。近年、半減期が長く、1日1回の経口投与による持続的な鉄排泄(糞中排泄)効果を発揮 するデフェラシロクスの適用が認められ、広く使用され始めています。

*実は鉄分に関しては、非常に良いサプリが見つかって、家族はそれを愛用していています。知らない人が多いですが、吸収が良く、胃の負担もなく、過剰になりにくいタイプのものです。何よりも、そのサプリを摂取するようになってからは、家族は貧血の問題から解放されています。上記に記載した内容を考えると、スポーツ選手にも役立つサプリだと感じています。スポーツ選手にとって記録や結果は大切なものですが、その先の人生を長い目で考える事が必要なためです。その点は、議論が分かれる事もあるでしょうが、その後の人生をどう考えるかですね。身体に良いはずのスポーツが身体に良くない原因はいろいろありますが、ヘモクロマトーシスもその一つになっているのかもしれません。