仕入れ先の中川養鶏場近くに来て、あまりにも美しい風景に思わず車を止めて魅入っていた。
凛と咲く彼岸花の赤に一面の白い蕎麦の花畑。
またこの季節が巡り来る。
お袋が亡くなって三度目の秋。
曼珠沙華。
この世では赤く咲き、あの世では白く咲く。
花言葉が過ぎしあの日々を雄弁に物語る。
『情熱』『独立』『再会』『あきらめ』『転生』『悲しい思い出』『思うはあなた一人』『また会う日を楽しみに』。
蕎麦の花は、『懐かしい思い出』『幸福』『あなたを救う』『喜びも悲しみも』。
まるで生と死を行き来し、躊躇いながら駆け巡る人の思いのよう。
血涙を流す人に、もう泣かないでと笑うお花畑の人。
いつか悲しみの中にも喜びを得、苦しみの中で明日へと心繋ぐ術を知る。
生命はエナジーの風。
両岸や時空の境なく吹き渡り、赤と白の花を揺らす。
その命の波は粒となり、花や木や石ころ、どんな小さなものの中にも宿り、観る者に宇宙の実相を示し、同じ心の波を無限へと誘い溶け込ませる。
そうしていつまでも見惚れていると、不意に懐かしい声がして振り向くと、山の上にぽっかり浮かんだ白い雲ひとつ。
センチな思いなど、青空に沈む灰色の雲。
天が囁く。
今日もまた、実のある学びに徹し、花咲く仕事を続けよと。
広い蕎麦畑を見つめ、凛々しく立つ情熱の思いで、この道をゆけと。