BGM:モナリザ  ナットキングコール

Nか村:結局のところ、ボクらが若い頃やり残してしまったことをこの歳になって、どこまで取り戻せるかってことだよね。

GIN:そうなんだよ。ボクらは間違いなくあの頃、やり残してしまったんだ。全てが・・・。
全てが中途半端なまま、社会という海の中にボクら、飛び込んじゃったから。必死だったよね、溺れてしまわないようにって。そうしてボクらはいつしか社会に同化し、やり残しを心の底に封じ込めてしまったんだ。

Nか村:ゴンもそう思うかい?

GIN:そう思う。けど、ボクはゴンじゃなくてギンだよ。



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Nか村:ボクは心の底から絵を続けたかった。絵を続けて、髪を伸ばして、ずっとジーンズをはいていたかった。そうすれば今という現実が変わるんじゃないかって、そう思ってた。それなのにボクは、
安定を求めちゃったんだ。大人になるって、安定することだって信じていたところ、どこかにあったから。

GIN:ボクも同じだ。ボクはギターケースをスーツケースに持ち替えた時、心の中が空洞化したように感じたよ。心がドーナツ化現象を起こしたんだ、ポンテリングのように。

Nか村:そうか。ゴンもボクと一緒だったんだね。

GIN:そうなんだよ。ドーナツ化現象しちゃったんだよ。ただしボクはゴンじゃなくてギンだよ。ゴンは始め人間で、ドテチンとお肉を食べてる人のことだよ。




Nか村:もう一度、ペンを握ってみようかな。あの頃みたいに絵が描けるかわからないし、すごく怖いけど。でも、もう一度ペンを持たないとボクの中で、何も始まらないように感じるんだ。そう。始め人間になるためには、ゴンがどうしても必要なんだ。

GIN:わかるよ。わかるけどNか村クン。始め人間になるために必要なのはゴンじゃなくて、ペンだと思うよ。Nか村くん、もう一度ペンを握ればいいんだよ。

Nか村:ゴン、ありがとう。ボク、もう一度絵を描いてみるよ。ペンを握ってみるよ。だからゴン、お前もギターを弾けよ。あの頃のように。閉塞したこの空気をボクらはどこかで打ち破らなければならないんだ。

GIN:確かにそうだ。ボクもゴンを買ってきて、ギターに張ってみようかな。そして、ブルーノートをもう一度自分の中に取り戻すんだ。

Nか村:そうだよ、それがいい。ただし、ギターに張るのはゴンじゃない。弦(ゲン)だよ。ゴン、ちょっと酔っ払ってるんじゃないのか?




こうして・・・。
酔っ払いなオヤジたちの夜は更けていく。
ナットキングコールの歌は、トゥーヤングに変わった。ボクらはあの頃。
若すぎた・・・。