新静岡センターのバスターミナルで待ち合わせをしたボクらはその日。
映画を見に行った。jは、ニュートラだった。
ファイダラーで着ていた大人っぽいヨーロピアンでない学生風なそのファッションは、ボクに合わせてくれたのかもしれなかった。ボクは、ファイダラーの時も、おえべっさんの時も、ジーンズだったから。
ジーンズにブルゾン。
二人は並んで、七間町の映画館街に向かった。

{5B1320A4-703C-40A0-8121-E41CC404410A}
グリースを見よう。
それは計画的な映画鑑賞ではなかった。
上映中の映画の中で彼女が見たいものを選ぶ。映画館街を歩きながら2人で決めた。ボクは、寅さんでもトラック野郎でも良かった。けど、やっぱり女の子は洋画なんだね。
普段、男子とばかり遊んでいるボクにとってそれは、なかなかに新鮮な時間だった。
映画館の入場券売り場で、ボクは学生証を提示して、大人二人分のお金を支払った。
それは古典的なデートの流儀。
男子が払うという不文律に則っての行動。
彼女は有難うってニッコリ笑って入場券を受け取った。そして映画を観た。ボクはそのストーリーよりも、女の子が隣に座って映画を見るというシチュエーションにドキドキだった。
だから。そのストーリーはほとんど覚えてない。
ただ、どう見ても高校生には見えないおっさん面のトラボルタと、ウオーター関係風な女子高生オリビアの笑顔が記憶に残った。
流れる音楽はよかった。アメリカの香りがした。
映画を観終わってボクらは、しぞーかの夜の街に出た。七間町をお街に向かって歩くと彼女が言った。「GINクン。私がよく行くお店に寄る?」。
ライブハウスだった。
ボクは賛成だった。音楽好きだったから。
彼女はボクをその店まで連れて行ってくれた、手を繋いで。辿り着いたのは小さなお店。
ドアを開けると、何処かで聞いたことのある男性の歌声が耳に入った。