萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

soliloquy 初霜月の庭―another,side story

2014-10-31 22:00:00 | soliloquy 陽はまた昇る
言葉、彩々
周太某日



soliloquy 初霜月の庭―another,side story

黄金、それから朱色に緋色。

空の青色に色彩きらめく、視界いっぱい陽光まばゆい。
きらきら光ゆれて葉の色も変わる、そんな頭上の空に周太は笑った。

「ん、秋だね…」

季の名前に笑いかけて少し気恥ずかしい。
だって秋は自分にとって特別だ、その理由の声が呼んだ。

「ただいま周太、」

あ、予定より早く帰ってきた?
こんな予定外も嬉しくて振向き笑いかけた。

「おかえりなさい、英二…早かったね?」
「直帰したんだ、」

綺麗な低い声が笑ってスーツ姿が来てくれる。
革靴が芝生そっと踏んで、その白皙の笑顔きれいに笑った。

「お、急に紅葉したな?綺麗だ、」

見あげる切長い瞳から睫濃やかに翳おとす。
華がある陰翳は惹きこます、そんな横顔に気恥ずかしくて俯いた。

―ほんと王子さまっぽいんだもの、

幼い日に開いた絵本の挿絵たち、あの美しい貴公子がリアルにいる。
こんな考えする自分が気恥ずかしい、だってこんな発想の成人男子は「変」だろう?

―だめあんまり考えたらこんなの子供っぽいってまた笑われちゃう、でも…きれいで、

こんな想像してるなんて笑われる、でも綺麗は綺麗でしかたない。
そう思うから尚更に惹かれて見つめて、その横顔ふり向いて笑いかけた。

「周太、」
「…ん?」

呼ばれて見あげた笑顔が腕を伸ばす。
スーツの懐へ抱きこめられて、くるり視界が青と朱金になった。

「ほら周太、寝転がって見ると綺麗だろ?」

綺麗な低い声が耳もと笑ってくれる、木洩陽きらめいて額ふる。
赤い葉、金色の葉、さまざま光ひるがし舞って芝生の緑に自分に色彩ふらす。
きらきら光る葉色も抱きしめてくれる腕も温かい、この時間が幸せで周太は笑った。

「ん、きれい…でも英二ちょっとまって?」
「なに周太?」

綺麗な低い声は幸せそうに笑っている。
きっと笑顔も今すごく綺麗だろう、けれど「ちょっとまって」に起きあがり言った。

「英二、スーツの時は寝転ばないでって言ってるでしょ?草の汁で染みついちゃうんだから、」

ほら、こんなことも解らないで無邪気に寝転んでしまえる浮世離れの人、だから王子だって想ってしまうのに?


にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村 にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へにほんブログ村

blogramランキング参加中! FC2 Blog Ranking

人気ブログランキングへ

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 雑談寓話:或るフィクション... | トップ | 雑談寓話:或るフィクション... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

soliloquy 陽はまた昇る」カテゴリの最新記事