彼女に初めて会ったのは、まだ10代。
男の子と混じって泥だらけの少女だった。
内気で運動が苦手で、人と交わることがもっと苦手な私とは正反対の活発で利発を絵にした少女だった。
小学校から存在はお互いに認知していたけど、なにぶんにも違いすぎて知り合いにすらならなかった。
仲良くなるきっかけは中学2年の夏。
臨海学校でたまたまペアを組まされて沖のブイまで行って帰るという競技をすることになった。
私は運動が苦手だったが、唯一水泳だけは漁師の父さんのおかげか得意だった。
彼女は当初外れくじを引いてしまったという顔を隠さず見下していた。が、2日後の競技を前に練習をする段階になり態度が変わった。
まるで狐にもつままれたように、唖然として現実についていくために私に一目置くような態度になった。
翌日の練習中に彼女が海で足がつった時に助けて手当てをすると、さらに態度が変わっていった。それはどう変わったのかと説明が難しい。
競技で私たちは優勝をした。
前の日に足をつっているし無理することないと言ったが頑として彼女は受け入れなかった。
彼女は、底力をだしていつもよりは遅いものの、4位に食らいついていた。交代をした私が速く泳げることを知らなかった大多数の生徒は驚いてどよめきが起こったらしい。そしてゴール1m前で交わしたのだ。
陸に上がると彼女は涙ぐんでいた。
たかだか内輪の臨海学校での催しにこれほど熱くなる彼女が、私の頭では理解の外だったが、その顔を見た時に少しだけ可愛いと思った。
臨海学校が終わって2学期から私の周りの態度が変わった。
彼女をはじめ活発な連中から声をかけられるようになった。遊びにも誘われた。
一方で何やら避けてくる人もいた。
私は変わらないつもりなのに周りが変わっていく。それが煩わしかった。
しかしやがて、ゆっくりと周りの態度は沈静化をしてきて3年に上がるころには臨海学校の前とさして変わらない状況に落ち着いた。
一人を残して。
そう、彼女だ。
彼女はしつこく私を遊びに誘う。
しかし、誘われる理由が見当たらない。
声をかけてきて おしゃべりをほぼ一方的にするが、内容は8割がたが分からない。
生返事のような受け答えがせいぜいだ。
彼女は一体何が楽しいんだろう?
ある秋の日に彼女に呼び出された。
「好きなの」
好意を表す彼女の言葉に頭がフリーズした。
他にも言われたような気がするが、その時の私は恋愛と言う感覚が分からず、というか自分にそれが降りかかることになることが理解の範疇になく・・。
後は覚えていない。
何となく彼女が目の前から消え(帰ったのだろう)回らない頭の中やっと家にたどり着いた。
数日間熱を出して、その熱に浮かされる中で夢精を初めてした。
その夢に彼女が出てきたことが後ろ冷たくて、何となく彼女を避けることになった。
頭の中はパニックだった。
学校は休みがちになり、だけど時期が時期だったため何とかなった。
私は早々に進学校へ推薦入試をして決め3学期は不登校を決めこんだ。
高校は男子校なので彼女とはそこで縁が切れた。
ホッとしたような、なんだか物足りないような。
高校は私にとって雑念を入れずに済むパラダイスだった。
つづく
後記:
このところ短編小説を書けるように頑張っています。
この話は4話完結を目指しています。それ以下なら上々。それ以上なら修業が足りないってところですかね。