日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

「レオナルド・ダ・ヴィンチとかくれキリシタンの聖画 -《洗礼者聖ヨハネ》像を「読む」-」を聞きに行きました(2017.9.30)@星美学園短期大学イタリア文化講座

2017年12月14日 | 日本文化紹介
「レオナルド・ダ・ヴィンチとかくれキリシタンの聖画 -《洗礼者聖ヨハネ》像を「読む」-」を聞きに行きました(2017.9.30)@星美学園短期大学イタリア文化講座


来年に もしかしたら長崎の教会群が日本の22番目の世界遺産に決まるかも...と思っていたので その観点から楽しみにしていきましたが お話を聞くうちに隠れキリシタンの長きにわたる苦悩が伝わってきて しかも星美学園というカトリックの学校で開催されたとあって 帰り道の坂を下っていたら 坂から見える風景が 若い頃行った長崎の風景に何となく見えてきてしまいました...

講座はまず レオナルド・ダ・ヴィンチの《洗礼者ヨハネ》と 他のいくつかの洗礼者ヨハネ像を比べることから始まって まずはイタリア・ルネサンスの絵画表現について考察しました

サインも何もなくてどうやって当時 誰がいつ何を描いたのかを突き止めるために 何が必要だったのか... 後世の我々は 美術館に行ってプレートに書いてある絵の説明を読めばいいわけですが...
というわけで 講師の先生に習っている学生さんたちはまず 何も説明を見ずに 先入観なしに絵を見て自分なりに説明してゆくディスクリプションという作業を しょっぱなからやるのだそうです 確かに必要な能力ですよね!

アトリビュート(attribute) 
これはペテロであれば鍵 聖人であれば光輪...といったように 対象物でその人物を象徴するもので 持物(じぶつ)ともいいます

イコン(ICON)
 これは標識で イコノグラフィー(iconography)は図像 何かの意味内容を表す画像 それらの解釈をするのが図像学です

 ← ダビンチの「洗礼者ヨハネ」

この絵を見ると ラクダの毛皮 指を天に向ける 背景が黒 モデルは弟子? 中性的に若く描かれており 他の画家の伝統的な描き方による作品とは違う等... そしてヘロデ王の娘サロメは イエスに洗礼を授けた洗礼者ヨハネの首を求め ヨハネは斬首されたといいます
王の肖像画として描かれた「ヨハネとしてのフランソワ一世」(ジャン・クルーエ)についてのお話が興味深かったですね


次に 日本独自の図像表現がみられる一枚の絵を見ながら 前述の学生の課題のように何の先入観もなしに 何が描かれているかを箇条書きにしてから 順次その謎を紐解きました

最初は何の絵かわかりませんでしたが...
男の着物の柄等は 椿の花と思われる花が描かれていること 椿の花は ぽとりと落ちることから斬首をイメージし 赤い色も殉教をイメージさせるとのこと

手に持っているのは? と 順番に見てゆくと それが長崎県の「かくれキリシタン」の聖画《洗礼者ヨハネ》の絵であることがわかります 川はヨルダン川 杖は雲の上にある小さな十字架と同じ色 なるほど~ 絵の技術よりも何よりも 信仰の強さから発せられるものが人の心をとらえるのですね 


ここでドイツの好きな私は ラファエロの「システィーナのマドンナ」が 宗教画が禁じられていた旧東ドイツ時代に クリスチャンの家に飾られていたのと同じだなぁと感じました この絵だけは芸術性が高く 唯一認められていたためです

そして次に 講師の小倉先生の 非常に体力のいる 平戸と生月島のフィールドワークのご報告に移りました

中ノ浦教会堂の窓の上(西洋の教会ではちょぅどステンドグラスが貼られている部分)には その椿の絵が描かれ さらに天井にはと思われる絵が描かれており これを発見した時の驚きが伝わってきました

そして 生月島の教会堂 黒島教会堂(黒島天主堂)など 潜伏キリシタンの教会についての貴重なお話を教えていただきました


お掛け絵
と呼ばれる 隠れキリシタンの民家での隠された祭壇に 聖水がお供えされ 上記の絵が飾られていたそうです

さらに聖地中江ノ島におけるサンジュワン(聖ヨハネ)信仰の可能性について探りました 中江ノ島には断崖絶壁があり その崖で取った聖水をお供えするお水取りの行事があります

  ← 中江ノ島 この断崖絶壁で聖水を取るという


一日数本しかないバスに乗り ようやく歩いて殉教の浜である根獅子ヶ浜に出た時の感動や 海の中の昇天石を見つけた時のエピソード チチャの木は出エジプトと似ていること バスチャンの椿(聖木)のこと だんじく様のお話 アントー様という民家の中にある殉教の碑 ガスパル様の松(聖木)等...実際に行かれただけあってすごい迫力でした 書かれたものがあると弾圧・処刑されてしまうため 伝承だったのですね 
イタリアでは キリスト教は 313年にローマ皇帝コンスタンティヌス1世によるミラノ勅令によって公認され 長かったキリスト教迫害に終止符を打ったのですが 日本では 1549年にF.ザビエルの来日で布教が始まり 1614年に江戸幕府により禁教令が敷かれ 1873年の明治政府のキリスト教解禁後に 多くはカトリックに復帰しましたが 長崎県などには先祖を重んじて 今でも隠れキリシタンが存在します  

また隠れキリシタンを描いた遠藤周作原作の「沈黙」という映画もご紹介いただき これは長崎の教会群を見に行く時にはこの映画見てからがいいなぁ~と思いました ちなみにオラショというのは キリシタン用語で「祈り」の意 ラテン語オラシオ (oratio) に由来します

ある家に来た男と結婚して子供も生まれたのでもう大丈夫と思って隠れキリシタンだと打ち明けたら 翌朝密告され捕えられてしまった話もしていただきました 切ないですね...

受講者の中には長崎に詳しい方もいらして 人数もけっこう多く大変充実した講座でした 今年度はとうとう全講座に申し込みました♪


このあとに開催された星美学園のイタリア文化講座は「宗教に揺れるイタリア
-移民の急増、イスラムとの向き合い方-
」(10/21) そして「未来派の身体感覚と舞踊 -前衛芸術運動のイタリア的身体観-」(11/18)です

「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(世界遺産候補)については こちら


「~かくれキリシタンと聖人信仰~」は こちら

講座は こちら


素晴らしい文化講座を開催してくださいました星美学園短期大学様に心よりお礼申し上げます。

* 写真は 中ノ浦教会堂 

*おまけ
上半身裸の女性肖像画、「モナリザ」の習作か?」パリで見つかった女性の絵がダビンチの習作か? ルーブル美術館の専門家が鑑定を進めているとのこと( ゚Д゚)

ニュース(2017.10.1)は こちら


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