東芝が過去5年間にわたり利益の水増しを行い、不適切会計を行っていたことは周知の事実である。そしてこの不正を見逃していたのは、大手監査法人の「新日本監査法人」であった。
これに対して金融庁は、新日本監査法人に対して、公認会計士法に基づく業務改善命令の処分を行う方針を固めた。なお監査審査会が新日本監査法人への立ち入り検査を行い、監査作業の実態を調べた結果、内部手続きの形骸化や不審点への追及不足といった問題が判明したという。
さてこの新日本監査法人は、過去にもオリンパスの巨額損失隠しにも関与し、業務改善命令を受けていたのである。従って2006年に中央青山監査法人がカネボウの粉飾決算に絡んで業務停止処分を受けたように、最悪解散に追い込まれる可能性も否めない。
それにしても、なぜ公正な立場を維持すべき監査法人で、このようないい加減な監査が行われるのだろうか。なお新日本監査法人では、大口顧客の担当者を長期間固定し、良好な関係の維持を幹部登用への暗黙の条件とする人事慣行があったというのである。
だがそのような慣行は、決して新日本監査法人だけの慣行ではないだろう。事実私が現役の頃に、私が勤務していた会社の監査を担当していた某監査法人が、次のような怪しい監査を行っていたものである。
私の勤務していた2部上場会社をA社、それより10倍以上大きい超大企業をB社とする。そのA社とB社がそれぞれ50%ずつ出資した合弁会社をC社とする。このC社に対する連結上の会計処理に対して、某監査法人はA社に対してかなり厳しい会計処理を要求してきた。それをそのまま受け入れると数十億円の損失計上を余儀なくされる。
ところがB社が行った会計処理方法は、繰延資産としてその損失相当額を将来に繰り延べるというものだった。しかもB社を担当する監査法人はA社と同じ監査法人なのである。つまり同じ合弁会社C社の会計処理がA社とB社で全く異なっており、それを監査しているのが同じ監査法人だというのだから、実に奇妙ではないか。
私はすぐに某監査法人のA社担当責任者に対して、B社と同じ会計処理を行いたいと申し入れた。そして同じ監査法人内で見解が異なる程度のものならば、大して重要な問題ではないだろうと追及したものである。
だが監査法人側の回答は、「担当者が異なるので見解が異なっても仕方ない、自分は絶対に繰延資産とは認めない」とのことでチョンであった。当時A社が某監査法人に支払っていた監査報酬は約5千万円、おそらくB社は数億円支払っていたのかもしれない。つまりその金額の差が、見解の差を生んだのではないだろうか。監査法人といえども、大勢の社員を養ってゆかねばならないという悲しい事実である。
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