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2014.10.17
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カテゴリ:小説
淋しくて.jpg

 翌日4人は、三キロ先にある神社まで初詣に行くことになりました。なんと雪道の中を歩いて行ったのですから、やはり若かったのですね。でも4人でふざけ合ったり、身の上話などをしながら歩いていたので、あっという間に神社に着いてしまったものです。その道すがら、私は来月会社を辞めて故郷の四国でお見合いをすることを、気楽に打ち明けてしまいました。それがあとで後悔することになるとも知らず、無邪気なものでした。
 それでも、昨夜この二人の青年たちと知り合ってからの僅か10時間足らずが、私にとっては生まれて初めてと言っていいくらい楽しい経験だったのは否めません。それは普段接している職場の荒くれ男たちとは全く異質でセンスの良い、しかも同年代の青年との出会いだったからでしょう。きっとあきちゃんも、同じことを感じたに違いありません。でも残念ながら、彼ら二人は明日帰る予定になっていると教えてくれました。

 宿に戻ると浅川さんが、「カップルになって、別々の部屋でくつろがないか」と言い出したのです。私とあきちゃんは驚いて「えーっ」と否定的な声を上げてしまいました。でもすぐに浅川さんが「夕飯までの2時間、それぞれカップルでお話しするだから心配無用」と笑いながら強引にあきちゃんの手を取って、自分の部屋に連れて行ってしまったのです。それで必然的に私と高山さんも二人きりになってしまったのでした。

 4人の時はよく喋っていた高山さんでしたが、二人きりになった途端に口数が少なくなってしまいました。たぶん彼は、いつも陽気で積極的な浅川さんにひっぱられているのでしょうか。私とあきちゃんの関係も、私が陽ならあきちゃんが陰かもしれません。でもどちらかと言えば、陽の私は陰の高山さんのほうに惹かれていました。もしかすると、私の心の中を見破った浅川さんが、私と高山さんを二人にするために仕組んだある種の計らいだったのでしょうか。
 でもそのとき、私と高山さんの間には何も起こりませんでした。と言うよりも、高山さんはほとんど喋らなかったのです。たった一言「きみは来月故郷に帰ってしまうんだね。幸せになれるといいね。」と言ったあと、「二人の知っている歌でも一緒に歌おうか」と言うなり、下手くそな童謡を歌いはじめたのでした。
 
 本当はあのとき、もし高山さんが私を抱きしめたとしても、私は彼の思うままに身を任せていたでしょう。そして、故郷へは帰るなと言えば、素直にそれに従っていたはずです。でも知り合って僅か10時間余りの人に、それを求めるほうが不自然ですよね。もちろん女の私のほうから、彼を口説くことなんかできるはずもありません。なんだか急に切なくなって泣き出しそうになりましたが、彼に気取られるといけないと思い、ぐっと涙を堪えておりました。

 
(次回、最終編につづく)

作:湯川和泉

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最終更新日  2014.10.19 12:50:43
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