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2014.12.18
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カテゴリ:忍草シリーズ
懐石.jpg

(鳥居耀蔵なんざぁ、江戸の町を知るめえな、裏なんかじゃねえ、こっちが江戸の表よ)
 柳橋の船宿、『梅の囲』に着いた頃には、丁度、暮れ六つ(午後六時)になっていた。
「あら、金さんお久しぶり、お忍びで?ぽん吉姉さん、さっきからそわそわ、お待ちかねよ。あんまり船を揺らして、落ちませぬように、たっぷりと楽しんでくださいな、ふっふっふっ」
 おかみのお梅は、万事承知の助、小型の屋形船から、ぽん吉が手を振っている。腰の曲がった老人の船頭、水猿の鯉兵衛に手を引かれて、影元は船内に入った。船台の上には天ぷらや、寿司などの酒肴が豪勢に並んでいた。船宿は料理茶屋でもあった。
「嬉しいわ、嬉しくて嬉しくて、金さん、あらいけない、もう、お奉行様ですもの、遠山様とお呼びしなくちゃね、でも今夜は昔のように、金さんぽん吉で狂いましょうね」目が潤んでいる。鼻孔が膨らんでいる。襟元から覗く、胸のふくらみが桃色に変わっている。
「まずは、一献、乾杯しましょう、ぽん吉もいただくわ」
遊女の手練手管、あわてず、気をもませ、じらし、そわそわさせる。それが、男を喜ばせ、影元の興奮が増幅することを知っている。

 影元とぽん吉は、金さん時代の放蕩時代を懐かしむように、酒を酌み交わし、料理を楽しんだ。飲んで揺られて、揺られて飲んで、酔いが回って、ぽん吉の絡み酒が始まった。これも忍技。
「北町奉行様、老中水野様も随分と、庶民をいじめるんですね、歌舞伎も駄目、芝居も駄目、見世物も駄目、矢場も駄目、花火も駄目、深川の『椿楼』まで駄目駄目で閉鎖されちまったのよ、駄目駄目駄目よ、なにも駄目、金四郎様、このままじゃ、江戸っ子は黙っちゃいないわよ!ちょいと、理不尽が過ぎやしないかしら」
「わしも、少々やりすぎだとは思っているが、なにしろ、老中の水野様が享保の大改革だと叫ぶ、南の鳥井耀蔵も犬の尾っぽ振りで、水野様の言うがまま、なんでもかんでも改革だと吠えまくる。わしも、北町奉行じゃからのう、取り締まらなくては、罷免されるかもしれぬ、辛いところよ」

 ぽん吉と影元が酒宴を終え、絡み合い始めたころ、鯉兵衛の操る、屋形船は、水面を滑るように、静かに水面を泳いで行った。新堀を抜けて大川に入り舳を北に向けた。外は、すっかり暗闇で、行燈の代わりに、ぽっぽっぽっと、蛍が川面を照らしていた。行きかう船は逢引き船か吉原帰りの猪牙船なのか、灯りを暗く落としていた。

(つづく)

作:朽木一空

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最終更新日  2014.12.18 10:47:21
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