著者:水原秀策
タイトルの黒と白とは碁石の色だ、つまり囲碁に関係した殺人事件という意味である。殺されたのは日本囲碁協会の大村理事で、その大村宅に不法侵入した元棋士の椎名直人が、殺人容疑で逮捕されてしまうのだ。
その逮捕された直人の兄で囲碁界の頂点に立ち、本作の主人公になる椎名弓彦が、弟の無実を証明しようと探偵役を買って出る。そして殺害された大村の背後に潜む人脈を探って行くという筋立てになっている。
ストーリーそのものは、それほど面白くはないのだが、囲碁界に関する記述や対局描写などはなかなか興味深い。またこの小説には囲碁の棋譜や図面などは一切掲載されていないのだが、まるで格闘技のような迫力ある対局風景を、文章だけで実に見事に表現しているのは称賛に値する。
それから28章タイトルの全てが、例えば「大場より急場」というような囲碁の格言で構成されている。さらには弓彦の師匠である蒲生謙吾にいたっては、実在した昭和の大棋士・藤沢秀行そのものと言うくらい、言動・風貌から生活態度や囲碁に対する考え方まで、びったしカンカンになぞっているのだ。
もちろん本作は囲碁を知らない人でも読めるようになっているのだが、やはり知らないより知っているほうが何倍も楽しめるということになるだろう。最後に著者の囲碁棋力はアマ四段だというのだが、ペンネームの秀策とは、江戸時代に最強を誇った棋士・本因坊秀策のことである。本人も大き過ぎる名前を借りたと後悔しているようだが、確かにそんな感じは否めないよね・・・。
作:五林寺隆
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