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2018.01.21
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カテゴリ:小説

江戸っ子はつらいよ 1



-- そりゃあねえ、なんてったって、江戸っ子の中の江戸っ子といえばねえ、火事場に駆けつけ、纏をかざす、鳶の町火消、日本橋の正五郎と、相場は決まっちゃいるけどね、、、、、
 気っ風がよくて、威勢がよくて、宵こしの銭は持たねえと気前がよくて、さっぱりした気性で、義理人情に厚く、強きをくじき弱き助ける、まあ、男の中の男だね、、、
 若い娘がきゃあきゃあ言って痺れるのも無理はねえわ、、おっと、誉め過ぎたかな---でもね、江戸っ子なんぞ、ただの見栄っ張りかもしれねえよ、、、

---ちょっちょっちょい!もうひとり、粋な江戸っ子をお忘れじゃござんせんかってんだい、そうさ、深川は堀川町、長兵衛長屋の棒て振りの魚屋、魚寅の寅次郎でい。
 こととらも、生粋の江戸っ子に違いはねえが、、寅次郎の方は、威勢はいいのだが、、、酒に飲まれる酒飲みで、喧嘩っ早いが、喧嘩に弱い、、、
--よっ、江戸っ子--などとおだてられていい気になってる男だ。おっと、寅さん、ごめんなさいね、正直に申し過ぎました。

 その寅次郎、明六ツ(午前六時)、まだ東の空に陽が昇ってない薄っ暗い中、魚寅と書かれた長屋の障子を開け、空っぽの魚桶のぶさがった天秤棒を肩に担いで、大きな空欠伸を一つして、女房のお里に、
「おっ、行っくらあ、」
「いってらっしゃい、気を付けて、飲み過ぎないようにね、」
「何言ってやがる、魚河岸に行くんだよ、、」
と、女房のお里に見送られ、威勢よく、長屋を飛び出す。
 はっはっはっと、と白い息を吐きながら、小走りで、永代橋を渡り、魚の臭いが充満している日本橋の魚河岸に着く。すでに朝売りが始まっていて、店持ちの魚屋や、料理屋の買い出し人、寅次郎のような棒て振りの魚屋たちが仕入れに来て、ごった返している、ぼやぼやしていては、イキのいい魚が手に入らない。
「ちょっちょっちょっ、おっと、ごめんよ、!!」
 寅次郎は天秤棒と空の魚桶を担いだまま、狭い通りの人込みをすり抜け、本船町の仲買人魚松屋の板船に並んだ鰹の前に立つ。
「さあさあさあ、、目に青葉山ほととぎす初鰹でぃ、今朝、上がったばかりの鰹だよ、まだピンピンしてやがる、江戸っ子は女房子供を質に入れてでも買えってんだい!!」顔見知りの魚松屋の番頭、鯖次が声をかけてきた。
「おっ!魚寅の寅さん、いいところへおいでなすった、どうでい、この鰹、持ってくかい!!」
 寅次郎、鰹の尾を持って品定め。
「こいつはよく脂がのってる鰹だ、よしっ、貰った。いくらだい」
「寅さんよ、一匹1000文でどうでい、」
「御冗談は一昨日(おととい)言いやがれ、将軍様が召し上がるんじゃねえんだ、明日死ぬかもしれねえ、病気の婆さんに食わせるんだい、まけろまけろ!!」
「魚寅の泣き落としかい、しょうがねえ、五匹で一両だ、」
「よしっ、決まりだ買った!」
 買った鰹を魚桶に入れ、ずっしりと重たくなった天秤棒を寅次郎は担ぐ、
「はいっ、ごめんよ、ごめんなさいよ、、、」
 また小走りで魚河岸の人込みを器用にすり抜け、潮待茶屋なんぞで一休みというわけにはいかない、急いで深川へ走る。永代橋を渡る頃には、朝靄も消え、東の空からお日様が顔をだして、寅次郎の顔を照らしていた。

 この時代、冷蔵庫も無けりゃ、氷もない、魚桶の鰹の上には笹の葉が乗ってるだけ、もさもさしてるうちには、魚が腐っちまう、だから、寅次郎のような棒て振りの魚屋は昼までが勝負だった。
 昼までに魚を売りさばき、それから堀川町の湯屋、椿湯で、汗を流してさっぱりし、湯屋の二階に上がって、茶汲み女の尻を撫ぜ、酒を飲みながら飯を食う。手慰みの花札博奕に興じ、挙句、喧嘩になることもままある。
 早朝から昼までは働き者だが、昼からは暇を持て余して、ぐでんぐでんになるまで酒を飲んでは失敗し、長屋の者にも喧嘩を売って暴れ、あきれられている厄介者だが、気性はさっぱりしてて、欲得よりも義理人情に厚く人がいいところもあるので、「江戸っ子が聞いてあきれるわ!」と、
陰口をたたきながらも、長屋の者は当たらず触らず程度に寅次郎とは付き合っていた。

(つづく)
  
作:朽木一空


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最終更新日  2018.01.21 10:40:43
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