「じゃあ、なんでも夢が叶うとしたら、君はどうするの?」

 

 

そのおじさんに少年が出会ったのは、ある神社の境内だった。

 

どこからどう見てもただの酔っ払いのそのおじさんに、

 

見るからにいいとこ育ちの、このお坊っちゃんが会話する「きっかけ」を得たのは、

 

トキが与えた偶然だった。

  

 

 

 

 

 

ライムくんは、小学6年生。

 

家は金持ちで、何一つ不自由無く暮らしていた。

 

でもそれが、不自由だった。

 

次から次へと与えられるせいで、「持っているモノ」に満足できず、

 

次から次へと「持っていないモノ」を欲しがるようになっていた。

 

あまりにも欲しいモノが多くなりすぎて、彼は神社へお願いしにやって来たのだ。

 

 

 

ライムくん
「神さま。僕には、欲しいものがまだ沢山あります。

 

ニンテンドーDS、プレステ、ラジコン、

 

あと、妖怪メダルは全部集めたけど、

 

念のために、もう一回全部集めてみたいです。」

 

 

【念のため】の意味と使い方が、よく分かっていないであろう小学生の口から漏れ出た、

 

この「妖怪」という音に、隣に居た変なおっさんが反応してしまったのだ。

 

 

 

おっさん
「え?今、妖怪って言った??

 

凄いな!神社に来て、妖怪にお願いしてるのかい?」

 

 

 

 

ライムくん
「いや、じゃなくて、妖怪メダルも知らないの?

 

おもちゃなんだけど、たくさん集めると、学校で人気者になれるんだ。

 

だから、もっといっぱい欲しいんだよ。

 

妖怪メダルだけじゃないよ。僕には、欲しいものがいーっぱいあるんだ。

 

だから、その夢を叶えてもらうために、今日はここに来たんだよ。」

 

 

 

おっさん
「そうか。おじさんには、その価値がよく理解できないけど、

 

きっと君にとっては、大切なメダルなんだろうなぁ~。

 

 

でもさ、欲しいものがぜーんぶ手に入ったら、楽しいのかな?

 

 

 

 

ライムくん
「楽しいに、決まってるじゃん!!

 

え?おじさん、バカなんですか?

 

こんな昼間っから、暇そうにしてる時点で怪しいとは思ったんです。」

 

 

 

 

おっさん
「そうかなぁ~。夢が全部叶ったら、絶対に楽しくないと思うけどなぁ。

 

よし。じゃあ、おじさんとゲームをしよう!

 

良いかい、おじさんが、君の願いをバンバン叶えてあげる妖怪だとしよう。

 

妖怪バクゥって名前ね。

 

で、妖怪バクゥには、進化系があるんだよ。」

 

 

 

ライムくん
「おじさん、妖怪メダルに詳しいじゃん!

 

進化系ってのは、その妖怪のレベルがアップしたやつのことだね!!

 

ジバニャンがレベルアップすると⇒ロボニャン⇒ダークニャンって変わるやつね。」

 

 

 

おっさん
「読者のために、サラッと説明ありがとう。気が利く小学生だなぁ。

 

そうだ、その進化系だ。

 

いいか、まずレベル1の妖怪バクゥは1つだけ夢を叶えてあげる。

 

さぁ、何を願う?」

 

 

 

ライムくん
「任天堂DSが欲しい!」

 

 

 

おっさん
「よし、それは叶った。次々に行くぞ!

 

今度は進化系の、妖怪バクバクゥが現れた。

 

この妖怪は、5この願いを叶える。さぁ、早く願いたまえ!!」

 

 

 

ライムくん
「えーっと、DSはもう持ってるから、

 

プレステと、メダルと、ラジコンと、ヨーヨーと、ケンダマ!」

 

 

 

おっさん
「はい、叶えた。

 

お!レベル3の妖怪バックンバクゥが現れた。

 

こいつは、10個の願いを叶えられる、進化系だ!さぁどうする??」

 

 

 

ライムくん
「えー、10個も??すげえや。

 

じゃあ、

1クラスの人気者、

2好きな子が僕を好きになる、

3頭良くなる、

4足速くなる、

5ピーマンがこの世から消える、

6あ、ゴキブリも消えて!

7でもカブトムシはたくさんGET

8学校行かなくてよくなる

9シュークリーム100個

10ケンカが強くなる。」

 

 

 

おっさん
「テケテテッテ・テッテーン!!

 

おめでとう!レベルアップして、最終形態が現れた。

 

妖怪マスターバクゥの登場だ!!

 

この妖怪は、個数の制限なんてない!!何でも、夢を叶えてあげる!!

 

さぁ、どうする?」

 

 

 

 

ライムくん

「何でも夢が叶うの?すげーや。

 

じゃあまず、サッカーボールが欲しい!」

 

 

 

おっさん
「ブッブー。それはもう叶っています。

 

いいかい、妖怪マスターバクゥだよ??

 

全ての願いを叶える事ができる、あの妖怪だよ??

 

この妖怪をGETしたら、もう叶っていない夢は、君には何もないんだよ?」

 

 

 

 

 

ライムくん

「あ、そうか。どんな夢でも叶える妖怪だもんね。

 

サッカーボールも叶ってる、DSも、人気者も、あの子のハートも、メダルも、シュークリームも・・・。

 

あれ・・・。

 

 

ねぇ、おじさん。

 

全ての夢が叶っているこの状態で、何の夢が湧くの??

 

 

 

だって、全部が叶ってるんでしょ??

 

「DSが無いから、DSが欲しい」と願った。

 

DSをGETしたら、もう「DS欲しい」なんて思えない。

 

次に「ファミコンが欲しい。」と願って、「ファミコン」もGETした。

 

 

今、「ファミコン」も「DS」も有るから、「ファミコンとDSが欲しい」とはもう思えなくなった。

 

 

叶える願いの個数を増やしていって、

 

ついに、全ての夢を叶える、妖怪マスターバクゥ登場!

 

 

 

でも、夢を全て叶えるこの妖怪を手に入れたら、何の夢も湧かないじゃん!!」

 

 

 

 

おっさん
「そうなんだよ。

 

中途半端な妖怪だったら、君に次の夢を与えるだろう。

 

DSを手に入れたら、次にファミコン。ファミコンを手に入れたら、次にメダル。

 

じゃあ、なんでも夢が叶うとしたら、君はどうするの?

 

 

 

 

ライムくん
「何でも夢が叶うとしたら・・・・。

 

何でも夢が叶うとしたら、僕には何の夢も無くなってしまうのか。

 

 

さっき僕は、

 

『何でも夢が叶いますように』と言うために、この神社に来たんだけど・・・、

 

 

何でも夢が叶うとしたら、そもそも何の夢も湧かないじゃないか!!

 

DSが無いから、DSを願える。

 

足が遅いから、速くなりたいと願える。

 

あの子が振り向いてくれないから、あの子のココロを奪いたくなる。

 

夢が叶っていないから、叶えたい夢が湧くのか!!

 

 

じゃあ、何でも夢が叶うとしたら、大変じゃないか!!!」

 

 

 

 

おっさん
「よく気づいたね。

 

何でも夢が叶うとしたら、君はもう何かが欲しいだなんて言わないはずだよ。

 

だって、「何でも夢が叶う」んだからね(笑)。

 

でもね、本当は、それも少し違うんだよ。」

 

 

 

ライムくん
「え?どういうこと?もう既に十分、心臓バクバクなんだけど?」

 

 

 

おっさん
「何でも夢が叶うとしたら、どうする?

 

正解は、簡単だよ。

 

『何でも夢は、叶いませんように』と願うはずさ。

 

 

夢のない世界から、夢のある世界へ行きたくなるはずだから。

 

夢がない世界なんてつまらないから、

 

夢が叶っていない世界へ、ココロから行きたくなるはずだから。

 

 

良いかい、その状態が、今の僕たちだ。

 

僕たちは、何でも夢が叶う状態になったからこそ、今、ここに居るんだよ。

 

いま、ここに、こうして、「何かが不足している状態」として、あるんだよ。

 

 

僕たちには、夢があるだろう?

 

DSだって欲しい、彼女のココロも奪いたい。

 

夢が叶っていないから、確かに苦しいけど、

 

でも僕たちは「無いもの」をここに手に入れたんだよ。

 

この手の中に、ついに「無いもの」を掴んだんだよ。」

 

 

 

ライムくん

「無いものを、手に入れた・・・。

 

そうか、僕には夢がある。

 

それは、「無い」からこそ、描ける夢。

 

確かに、無いのはつらいけど、

 

でも、夢がなんでも叶ったからこそ、ここを夢見たのか。

 

おじさん、分かったよ!!

 

僕は、いま、このままで、もう夢が全部叶ってるんだね!!

 

夢が全部叶っているからこそ、僕は、ここに、不足を持って、生きているんだね!!!

 

 

僕が、夢見れていることを証拠として、僕の夢は全て叶ってるのか!!

 

そうか!僕の夢は、僕が夢見ることだったのか。

 

 

 

おっさん

「そうだ!よくそこまで悟りを開いたな、ぼうず。

 

夢が全て叶ったからこそ、君はいま、夢を見れているんだよ。

 

だから、これからも、欲しがれよ。

 

それは、苦しいし、辛いし、周囲とぶつかるぞ。

 

でも、それで、良いんだよ。

 

君の夢は、もう全て、叶っているんだからな。

 

 

じゃあもう、ついでに、おじさんの夢も君が大人になったら叶えてくれよ。

 

うん。ぼうずなら、出来そうな気がする。

 

おじさんに、ベンツと豪邸のおこぼれちょうだいよ。」

 

 

 

 

来夢くん
「やだよ。

 

でも、おじさんも良かったね、無いものが有って。

 

こんなに色んな事をシってるおじさんでも、欲しいものが有るなんて。

 

 

あー、今日はなんか、いい気分だ♪

 

 

 

それにしても、ベンツなんて・・・、

 

この妖怪メダルと比べると、ダサくてまったく欲しくないのに。」

 

 

 

おっさん
「お、じゃあ君のパパのベンツのキーをちょっと盗んできてくれよ。

 

おじさんが、妖怪メダル1枚買ってやるから。」

 

 

 

 

木々が取り囲む昼間の神社は薄暗く、

 

二人の笑い声を街の喧騒から優しく包み込んだ。

 

 

神社という聖なる場所で、まさか少年に「窃盗」を共謀するおっさんを、

 

高ーい位置から、微笑ましく眺めている存在の願いが、

 

今日もここでは、叶い続けていた。

 

 



 

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↓「じゃあ、何でも夢が叶うとしたら、どうするの?」

 

これはきっと、哲学的なトンチだと思う。

 

だって、「何でも夢が叶う」んだったら、夢は湧かないはずでしょ?

 

夢というのは、叶っていないからこそ、見れるものなんだから。

 

 

あなたの願いは、何ですか?

 

「夢が何でも叶う状態」になることですか?

 

その夢が叶って、「夢が何でも叶う状態」になったら、あなたは何を夢見るの?

 

 

きっと、「夢が叶いませんように」と願うだろうね。

 

良かったね、あなたは、いま、そこで、そのままの状態で、

 

願いがかなっています。

 

 

あなたの夢は、あなたが夢見ることだったのだから。

 

 

「無い」お陰で、何かを願える今日に、感謝です。

 

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3日前の記事から読むと、効果的です。

 

 

 

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