童話の星屑たち

みついただしの描く小さなお話たちです。

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柿のきもち

2015-10-22 | 空のはなし
「今年も採ってくれないのかな~」
今は誰もいない荒れた庭の、
柿の木はつぶやきました。
枝には、橙に実ったたくさんの柿の実が
ぶら下がっていました。

せっかく実った柿の実が、このまま真っ赤に熟して地面に
「ベチャ」と落ちることを考えると
悲しい気持ちになりました。

「きれいだね」
「ちがうよ、おいしそうだよ!」
久しぶりに子供たちの話す声がしました。
木の下で、ちいさな兄妹がジッと柿の実を見上げていました。

「おにいちゃんとって!」
「ソレ!」「アレ?だめだ~・・・」
兄妹はジャンプしたり幹をよじ登ろうとするのですが、
柿の実にはなかなか届きません。

「おや、めずらしい」
昔はこんな子供がよくやって来て、柿の実を採っていったものです。
柿の木はうれしくなって、甘くて食べごろの柿の実を選ぶと
ふたりの小さな手のひらに落としました。

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4 コメント

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Unknown (通行人)
2015-11-01 15:43:17
最近…柿にしても梨・みかん食べなくなりました。子供時代は梨・柿・ビワ・夏みかんの木があり勝手に拝借してましが…あの頃は美味しく頂きましたね。
通行人さん (みつい)
2015-11-02 22:03:56
子供時代は、同じく友達と塀から伸びる庭の柿を拝借してましたね。固かったり渋柿だったりと、甘かったらラッキーなんてドキドキしながら遊んでいました。
実って放置されている柿の木を見て、こんな話を書いてみました。
Unknown (桃子)
2016-05-02 17:49:59
こんにちは。
相手の身になって書いた物語は、心にきていいですね。
私も、柿は好きです。
柿だって、生きているのだから、物語の主人公でも、新鮮でいいですね。
これからも執筆頑張って下さい。
失礼します。
桃子さん (みつい)
2016-05-05 11:25:46
こんにちは。コメントありがとうございます。
このお話は、橙色に色づいた柿の木がきれいだなと感じたのと、子供の頃の郷愁を込めて書いたと思います。
季節は巡って、もう春というか初夏になってしまいましたが、またお話を書きますので寄ってくださいね。

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