洋風文化全盛の時代は過ぎて、いまは和的な要素の含まれたものが当たり前のように目に入る時代になっています。
いや、それは日本に暮らしている以上、至極あたり前なことなのですけどね。
「和モダン」といったものが、人口に膾炙して幾年。
今日は、和的な要素の中から、「現代の和」における特徴である「シンプルな空間」をいかに演出していくのかという点をご案内しましょう。
先述しておりますが、「現代的な和」に含まれる大きな要素の一つに、「簡潔」というものがあります。
簡素よりは、簡潔といったほうがよいでしょうね。
単純化されているということが、つまらない、すぐ飽きてしまう、使い勝手に不便があるということになるわけではありません。
すぐれてシンプルなものは、一見、単純な空間にしか見えなかったとしても。不都合無く、生活を包み込みます。
はじめからお仕着せの単純な空間なのではなく、複雑なものを簡潔に処理することによって、シンプルにつくりあげられたものだからです。
シンプルな空間であればあるほど、細かな部分への心配りが必要です。
便利な機器類が空間の美しさを損なうことのないように、あくまでも美的目的を中心に、便利さをコントロールしなければなりません。
よく考えられた構成というものは、ものがあったとしても、それが不必要に目立つことがないため、すっきりとして見えるのです。
ここで重要なのは、適切なレイアウト、詳細部の美的処理です。
それによって、落ち着いた安らぎが得られます。
心安らぎ、くつろげる空間とは、住まう人、集まる人にふさわしい空間なのです。
さて、この場合、部屋を小さく独立させればいいのかといえば、必ずしもそうではありません。
かといって、広いばかりで何もかも見えてしまうというのも、心安らぐ空間とはなりにくいものです。
「見え隠れ」の「和」の手法のバランスは、永遠の課題です。
視覚的な美しさの第一歩は、便利だからといって何もかも身近に置くことではなく、かといって、何も置かないということでもなく、目的と異なるものは見えない状態にして置くことです。
すなわち、人の行為や目的を、見えるでもなく見えないわけでもないという、「見え隠れの変化」で処理します。
先人が時間をかけて磨き上げた「和」の感性を、空気のように吸い込んで、現代にふさわしい居心地良い空間を組み立てることは、現代の日本人にとっては、西欧に習うよりも容易なことのはずです。
和の生活理念は、現代のモダンさの先にある考えだと、私は思っているのです。
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