栽培技術において最も重要なこと | あなたも農業コンサルタントになれる

あなたも農業コンサルタントになれる

  わけではない / by 岡本信一

農業経営にとって栽培が上手く運ぶことは非常に重要で、ものがとれなければ始まらないし、収量や品質が経営に直結するのは間違いがない。では、栽培技術で最も注意し考えるべき点はなにか?

まず、目標とする量や品質で農産物が安定的に収穫できることが重要だ。

その中で歩留まりというのは非常に重要という話は何度もしている。歩留まりが悪いと何故、経営に悪影響をおよぼすのかというと、歩留まりが良かろうと悪かろうとほぼ作業量は同じであって、経費は変わらないというところに起因する。経費は同じで、出来る量や質が違うということなので利益が違ってくるのは当然である。

この歩留まりは、畑で計測をしてみればわかるが個人差が非常に大きい。天候条件の良い時にはさほどの違いはないが、天候条件が悪化すると途端に個人差が大きくなる。

恐らく多くの人は信じられないと思うが、実際には個人による歩留まりの差が30-90%と非常に大きな差になってあらわれることもある。特に天気の悪い時には顕著だ。

天気が悪くても収穫できれば苦労しないなどという言葉が聞こえそうだが、例を挙げる。

最も簡単な話として天候不順時の倒伏がある。この倒伏の原因はとなっているのは、窒素過多であるというのは多くの方が知っている。隣の圃場同士でも倒伏している畑もあれば、していない畑もある。この差は、多くの場合、窒素の量による差であるが、これは天災ではなく人災であることはだれにでもわかるだろう。

天候不順時でも安定して取れることも大事だし、歩留まりを向上させることも重要。

では栽培技術で重要な事は一体何かというと、一つひとつの作業の意味を考えて、丁寧に作業を行うということなのだ。


歩留まりを向上させるためには、ほ場内でのバラつきをなくす必要がある。

ほ場内でバラついているようでは出来たものもばらついてしまい、良い物もあるが悪いものも出来る、と言う当たり前の状況になってしまうが、揃いが良ければ基本的に悪いものはできにくい。

なるべく株ごとの出来を揃えることも大事だし、ほ場内での出来に差が出ないようにするのも重要だ。更にほ場内でのばらつきが大きいと栽培技術の適用のしようがないのである。

隣同士の株でひとつの株は窒素過剰、ひとつの株は窒素不足だとしよう。さあ、窒素を与えるべきなのか、与えないべきなのか。全体として過剰が多い場合、施肥しないということになるが、窒素不足の株の出来は悪くなるだろう。場所によって出来が違う場合でもなかなか、そのための対処は行なわないために一律管理となるはずだ。そうなると、出来のバラつきは更に助長される。つまり、出来たものがバラつき=歩留まりが落ちるということになる。

一般的に言って、ほ場内の出来が揃っている方は、経営がいい。理由は、揃っているから歩留まりが良いためだ。

同じような肥料、同じような耕種方法、同じような防除を行っているにもかかわらずこのような差が出る理由は何処にあるのかというと、ひとつひとつの作業の精度である。


露地栽培の場合、耕種作業(堆肥散布なども含む)→播種のための整地→播種(定植)と進み、この後は手の施しようがない。最初の揃いが悪ければ、あとはばらついたままで場合によっては出来の違いが更に大きくなる。

つまり、圃場のバラつきというのは、播種前の作業と播種まででだいたい決まってしまうと言っていいわけだ。

耕種、整地の作業というのは一見誰がやっても同じに見える。しかし、オペレーターの気の使いようによって土壌表面のみならず、硬盤(耕盤だが、あえて硬い盤ができるので硬いを使用したい)層のバラつき、苗の出来、播種精度など大きく違っている。播種にしても、元々の土壌条件がバラついている上に、オペレーターが荒っぽく作業をすればどれだけ発芽やその後の出来の揃いが悪くなるかは想像がつくと思う。一つ一つの違いは小さくても、後には大きな差となってあらわれる。

機械作業でも上手い下手がある。プラウ耕などでも土壌表面がきれいにならされている人もいれば、ガタガタの人もいる。この差はじつは非常に大きい。この手の細かい作業の違いについては、次回書くとして、今回はこの差がどのように影響を及ぼし、技術導入を妨げるのかだけを書いておこう。


はっきり言って、ほ場内のばらつきが大きい人は、新しい技術や高度な資材を使用するのは無駄だ。

土作りも無駄になるし、新しい機械の導入も余り大きな効果を及ぼさないかもしれない。理由は、ほ場内でバラつきが大きければ、場所や株によっては逆効果になるし、バラつきを助長する可能性もあるからだ。

実は、篤農家とそうでない農家の差というのは、ここにある。ほ場内の出来の揃いを意識している方は少いが、実は出来不出来に最も関与しているのはほ場内のばらつきが大きいか、そうでないのかということはこと歩留まりに関しては影響が非常に大きい。

そのために新しい技術、機械導入してもうまくゆく人とそうでもない人が出るのである。同じことをしても差がつくのはこのためなのだ。

以前、株間がばらつくのは問題ということを書いたが、株間のバラつきだけではなく、苗管理や耕種作業など播種前作業の精度によって大きな差がつくということだけは理解してほしい。

栽培技術として、揃えるということは意識されていないが、実はもっとも重要な技術である。新しい技術や高度な資材を導入するのは格好の良いものであるが、足元の本当の基本といえる部分に気を使い、それぞれの作業の意味を考え、丁寧に行うというのは栽培にとってもっとも重要な部分である。

揃いを意識して作業を行うと新しい技術的側面が見えてくると思う。

ブログランキングに参加しています。

もしこのブログが役に立った、応援してもいいとお考えでしたら、ポチっとしていただけると更新する励みになります。よろしくお願いいたします。

にほんブログ村

農林水産業 ブログランキングへ