土壌をデザインする
この言葉は、解析をお願いしている方が漏らした言葉だ。
土壌をデザインし、設計図を作る。
何のことかと思われると思うが、土壌の物理性や「農業を科学する研究会」などについて聞かれることが多く、どのように説明したらと言葉に詰まることが多いのだが、その中で説明しやすい言葉なのかな、と思っている。
土壌物理性の基準、指標を作る、と言ってもピンと来ない人が多いので、改めて説明してみたい。
まず、農業から離れて説明してみよう。
建物を作るには設計図が必要だ。その前にどのような建物をどのような目的で建てるのかを考えなければならない。
何かの建物を建てる建てるためには、目的に沿ったものにする必要がある。
ビルにしろ商業用のビルなのか、マンション用のビルなのか、を決める必要があるのはアタリマエのことだ。
次に、目的に沿ったビルを設計しなければならない。
コストや条件に見合った設計図を作成する必要があるだろう。
設計図ができたら細かな検討が出てくる。
どのような資材や工法を採用するのかなど、おおまかな設計段階で検討しつつ細かな設計を行うことになるだろう。
多くの検討を行った結果、やっと着工に至る。
着工に至ったら、現場では細かな修正が必要なのは当然だが、設計図を無視することはありえないだろう。そのような場合は、手抜きであったり、全体との整合性にかけるので欠陥建造物と鳴るだろう。
私は建築にはさほどの知識はないが、おおよそ以上のような工程で行われているのだろうと想像できる。
私がよく語る土壌物理性の基準というのは、設計図にあたる。
農家の方が考えるべきは、どのような生産を行いたいのかという目標の設定が最も大事。設計図は、それを元に作成されるためだ(実際にはここが非常に曖昧である)。
設計図ができたら、設計図通りにするためにはどのような資材や機材をどのように使用するのかを考えるのが、農家の方の役割なのだ。
大胆に言ってしまうと農家の方には設計図は作れない。
膨大なデータと解析が必要であるためである。農家の方の中でかなり数値データをとっている方がいるが、全く別の場所に行ってそれをそのまま適用できるかというとなかなかそうならない。
なぜなら、自らの圃場データを収集しているにすぎないからだ。
一般的に言えば、自社圃場の必要データを持っていれば充分であり、それ以上は必要ない。
しかし、ある程度汎用的なものにするためには、多くのデータが必要になるのである。
わかりやすく説明しよう。
pHという基準値がないとしよう。優れた農家の方が、体験的にどの程度の石灰を投入すると良くなるということを把握したとしよう。
しかし、それは永遠には続かない。同じ量の石灰を投入し続ければ、石灰過剰となりpH が高くなりすぎるだろう。しかし、もっと観察力にとんだ農家であれば、様子を見ながら石灰の投入量を変えることが出来るようになる。しかし、そのような農家でも全く条件の違う場所であれば、試行錯誤が必要になるだろう。
しかし、pHという基準があれば、試行錯誤は最小限となるのである。それは、汎用的で完璧ではなくおおまかな指標であるが、多くの助けになるのである。
さらにpH指標があれば、どのような資材をどのように散布するのかを考えることが可能になる。どのような資材を使用するのか、一年で改良するのか、何年で改良するのか、などなど。
それだけ指標ということを知るだけで幅が広がるのだ。
今回言いたいのは、指標というのは一種の設計図ということだ。
私が研究会で考えているのは、ある程度汎用的な土壌物理性の指標づくりである。
土壌の物理性の重要さは多くの方が理解している。しかし、その明確な指標がないのだ。土壌の物理性は、三次元的に考える必要があり、深さという概念が不可欠なのだが、従来ある土壌物理性の指標には深さの概念がない。
私が目指す指標ができた暁には、その指標を利用した場合には圧倒的なアドバンテージを得ることが可能になると思っている。
土壌物理性や研究会を立ち上げた理由の一端には、このような理由があるということを書いておきます。
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