高齢者が握力測定を行う目的は?その方法は?

高齢者が握力測定を行う目的は?その方法は?

みなさん、こんばんは。崖っぷちのOT林です(@tyahan56)

介護予防の評価項目として挙げられている”握力測定”。
一応、正しい握力測定方法について把握しているつもりですが、ここは再確認として!

そして、なぜ高齢者は握力測定が必要なのかもお伝えしようと思います。

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介護予防の評価項目

介護予防では体力測定のために行われる評価項目には、次の通り。

・握力
・開眼片足立ち検査
・通常、最大歩行テスト
・膝伸展力
・Functional Reach
・Time Up&Goテスト
・長座位体前屈
・ペグボードテスト

 
一度は聞いたことのある検査項目ですね。前職場では、要支援者への評価としてペグボードと長座位体前屈以外の検査をよく実施していました。
※ペグボードでは、OTとして評価したことがありますが…。

なぜ握力測定が必要なんや?と疑問に思ったことありません?

握力測定の方法

ここでは、一般に行われている測定方法について説明します。
握力は部分的な負荷である上、測定に時間がかからないため最初に配置されます。

まず握力計の握り方や測定方法は、次の動画が参考になります↓

 

握力測定の注意点

紹介した動画を見ると分かるのですが、次のように行うのはファールとなります!
・衣類につけて握ってはならない!
・大きな声を出してはならない!
・直立姿勢を崩してはならない!

いますよね~!そんな人笑

利き手で2回測定する。
※2回目の測定時に「泣いても笑っても最後だと思って思いっきり!」と促すと、1回目の時よりもアップしますよ笑
※利き手がわからない場合は、「包丁を持つ手はどちら?」と聞きます。それでもわからない場合は、握手して力の強い手を利き手とします。
※両利き手の人(私がそうです)の場合はどうするのか?個人の経験上ですが、ジャンケンをします。左右どちらかの手が前に出したのが利き手として考えています。

結果数値は小数第一位を四捨五入し、整数値で記入する。

体に触れないように注意。

握力計を振り回したり、膝を曲げたりしない。
※心疾患、高血圧症のある人は、なるべく「息を吐かせながら」測定を行う

立位が不安定な高齢者は端座位で実施する。
※大腿の上に握力計を乗せて行う人がたまにいるので、正しい方法を伝えましょう!

 
★年齢別の平均値を知りたい方はこちらへ。

握力測定の目的を伝えてる?

そもそも握力を行うことにどんな意義があるのでしょうか?
OT視点から、PT視点から、と職種によって意義が異なるとは思いますが、改めて高齢者に行う握力測定の意義を確認したいですね。

大切なことは、高齢者の方に「握力を測定する目的は、ナニナニナニのためです。」と納得させることです。

「はい、次は、握力検査ですね!」
「はい、お疲れ様でした~!で、次は、歩行テストで~す!」

…と検査の目的など何の説明もせずに事務的な流れで検査を行うのは、めっちゃ失礼ですよね。
検査目的とその結果を偽りなく伝達することが、対象者との関係を築く上でもとても重要です。

男性は握力25kg未満、女性は20kg未満の場合、注意が必要です。前職場のPTから「杖把持するのに必要な握力が20kg以上あると望ましい」とアドバイスを頂きました。

特に女性高齢者で杖使用者の方は、握力低下の人が多く見られました。
把持力アップのためにも前腕を含めた筋トレ方法を指導したことで、「杖をブレずにしっかりと把持できるようになった」と嬉しいコメントを頂きました。

握力アップすれば、ドアの開閉や手すりの把持、物体の把握・保持など他の動作も関連付け向上につながりますね。

 

なぜ高齢者は握力測定が重要か?


握力測定は、身体機能テストの一つとして測定することが多いと思いますが、サルコペニア診断基準の一つに握力測定もあります。

なぜ、握力測定が必要なのか?
そもそも握力はモノを把持する力がどれほどなのか?チェックするためです。
杖や手すりを把持する、皿や荷物を持つ、紙を抑える、壁を押すなど、手には様々な動作があります。

以前、お手伝いで高齢者向けの体力テスト(私は握力測定担当)を行いました。参加者の中には、自分の握力の測定結果を見て、「この数字は、いいの?悪いの?」と質問される方が数人ほどいました。

手元に平均握力のデータがあれば、お答えるすることはできます。(※文部科学省の出した平均握力ってちょい高いんだよなぁ笑)

◯◯さんの握力は平均握力データのを見ると、この辺りになりますね。

ですが、握力の重要性についてもっと説明すべきかなと思います。

高齢者に行う握力測定の意義とは?

次の文献を見ると、握力測定はいかに意義があるかを示唆してくれます。
※詳しくは→高齢者に行う握力測定の意義

文献から大切なポイントを簡潔にまとめてみました。

握力測定の意義

  • 握力は高齢者の総合的な筋力として表し、片足立ち能力との関連がある。
  • 握力と大腿四頭筋筋力や足把持力との関連がある。
  • 全体的な上肢の筋力の把握のみならず、下肢を含めた高齢者の筋力の大まかな把握に握力測定は有効。
  • 握力が強いほど歩行距離が延長しているので、歩行持久力の把握にも握力測定は有効。
  • 握力が強いほど10m障害物歩行時間が短縮→握力測定で転倒の危険性の予測に有効。

だから、身体機能テストの中に必ず握力測定があるんですね。

要するに、握力測定は体力の把握と転倒の危険性をチェックするのに必要な検査方法ということになります。

握力値だけが分かればOKではなく、「体力とか歩行の能力、転倒の危険性などを把握するのに握力測定が必要です。握力が強ければ強いほど転倒の予防につながるんですよ。」と伝えておくと、参加者たちは握力の重要性を認知していただけるかなと思います。
 

握力5kg低下すると、脳卒中の発症リスクが増加?

握力の低下は体力の低下と関連があるだけでなく、心筋梗塞や脳卒中のリスクが上昇するという研究結果がありました。

握力が5kg低下するごとに、何らかの原因による死亡リスクが16%増加することが判明した。握力が低下することで、心血管疾患のリスクは17%、心筋梗塞リスクは7%、脳卒中リスクは9%、それぞれ増加した。

(略)
高齢者は握力に限らず、転倒予防などのために下半身の筋力を維持するような運動も必要となる。「握力は全身の筋力のひとつの指標と考えるべきで、これらの筋力が低下しているからといって、部分的に筋力トレーニングを行うのは不十分です。運動をする場合は、全身の筋力が向上するようなトレーニングを行う必要があります」と、レオン氏は説明している。

このように、握力が5kg低下すると、心血管疾患や心筋梗塞、脳卒中の発症リスクが高まります。高齢者は部分的に筋トレを行うのは不十分で、全身の筋力を向上するトレを行うことが重要だということです。

 

握力UPが認知症予防に!?


ご存知でした?
握力の弱い人は認知症の発症リスクが高まる!ことを。

握力が男性26kg未満女性18kg未満の人は、そうでない人に比べるとリスクが2.1倍も高まるという結果が出ました。

東京都健康長寿医療センター研究所によれば、下記のように認知症の8つのリスク要因を挙げられています。

認知症の8つのリスク要因

①アポE4多型遺伝子を持つ、家族に認知症の患者がいる。
②MCI(軽度認知機能障害)の人
③脳卒中、糖尿病、心臓病の持病がある。
④学校教育を受けた年数が9年以下
⑤難聴がある。
⑥身体活動が低下している。
⑦握力が男性26kg未満、女性18kg未満
⑧うつ傾向がある。

該当する項目があったら、重点的に生活習慣改善などの支援を行うべきだとされています。

難聴という項目があったので一瞬ドキッとしたけど、先天性難聴だから多分大丈夫かと?

ところで、なぜ握力低下が認知症の発症リスクになるのか?
もし握力が衰えてしまったら、生活上、どんな支障をきたすのかを想像したら分かると思います。

箸が持てない、お椀も持てない、ドアを回せない、蓋を開けられない、着替えができない、書字ができない…など。
手指の基本的な動作ともいえる「物を持つ」、「把持する」、「押さえる」動作が衰えると、主体的に行動を起こしたり考えたりすることが億劫になってきます。

結果的に、脳の機能が低下し認知症の発症リスクが高まるわけですね。

 

さいごに

握力測定は高齢者の体力を評価するのによく用いられますが、私も現場でよく握力測定を行います。

現在の握力で普段の生活を難なく送れるかどうかを測定するわけですが、それだけではありません。握力と大腿四頭筋や足把持力との関連があり、下肢を含めた高齢者の筋力のおおまかな把握に握力測定は有効なのです。
それに握力が強ければ強いほど、長距離歩行や歩行持久力アップにつながるのです。

だから握力測定が必要なわけですね。

私も健康寿命を伸ばすために握力つけようかな!

あなたの握力、いくつ?


最後までお読み下さりありがとうございました。
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