(前回からの続き)
すでに本家・アメリカはもちろん、世界中の株価を引き上げてきた米FRBの量的緩和策(QE)は10月で(とりあえず?)終了しています。それと同時に開始された日銀の追加緩和などを受けて米株価はその後も上昇していますが、日米以外のマーケットは微妙な感じです。とくに警戒が必要なのはQEマネーの流出が懸念される新興国やジャンク債等のハイリスク市場。これらのどこかで―――どこかの国とか企業がデフォルトやリスケに追い込まれるリスクが高まっています。
で、ひとたびそんなことが起こったら、マーケットはたちまちネガティブに反応し、当該リスク発生市場はおろか、欧州やアメリカの株価も大きく下がるでしょう。なぜなら、繰り返しですが、これらもまた、ちょっとしたことで弾けそうなバブル(各種株価指標等からみて大きく上方に乖離した価格)だからです。
そしてこの場合、もちろん年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の外国資産の評価額も下がります。全資産に占めるこの割合が高まっていれば、それだけダメージが大きくなります。さらにマズイのが、当然ながらこのとき、円高外貨安が進んで多額の為替差損まで生じることです。
実際、今週(12/8~12)はギリシャの債務不安再燃が嫌気され、9日、同国の株価指数は前回の危機時にも見られなかった13%もの下げ幅を記録しました。これに反応した市場は一気に「リスク・オフ」モードとなり、「円」は全面高―――主要16通貨のすべてに対して上昇しました(ということは、ソブリン格付けが日本よりも上位の米・英・その他諸国のどの通貨よりも市場では円が「安全」とみなされているわけで、このあたりに、わが国の格付けとか先日のムーディーズの同格下げがいかに無意味かが表れていると思います)。
このようなとき、この16通貨建ての資産価値はすべて下落・・・。株は、その国の通貨建てでも下がるし、円建てでの価格はもっと大きく落ち込むことになります。そして債券(おもに米国債やドイツ国債など)の価格は、その国の通貨建てでは少しは上がるかもしれませんが、円建ての価格はこれまた下がるでしょう。
以上のようなことをあれこれ考えると、「リスク・オン」のピーク付近で外国資産投資の拡大に乗り出したGPIFは、二重の意味で「高値掴み」をしつつあるように思えてならないわけです。二重とは・・・ひとつは外国株を最高値近辺で買ってしまうこと、そしてもうひとつは、円からみて外貨が最高値あたりで外国資産を買ってしまうこと・・・。
株などのリスク資産投資の成功の秘訣は「逆張り」のはず(?)。これに対してGPIFはこんな具合の超「順張り」で勝負!・・・って、そんなことでこの先の激動の(?)リスク・オフ局面で勝ち続けることなんてできるのでしょうか・・・。GPIFの元手はわたしたちの貴重な年金原資だけに、何とも不安でなりません。