(前回からの続き)
現在もオンゴーイングな(?)株バブルにあって、時価総額が異様に膨張している米企業の一例として前回、フェイスブックを取り上げました。次に紹介するのは、テスラモーターズ(テスラ)。2003年に設立された電気自動車のベンチャー企業です。
で、このテスラの時価総額ですが・・・9日時点で約527億ドルと、米上場企業中で161番目です。まあ上記のグラフで同1位のアップルとか本邦企業1位のトヨタ自動車などと並べるとそれほど大きな会社には見えないかもしれませんが、じつはこの金額、全米一位の自動車メーカーGM(約517億ドル)のそれをしのぎ、わが国の日産自動車(約403億ドル:1ドル113円で計算)の時価総額を大きく上回るほどのビッグなスケールだったりします・・・
それほどの自動車メーカーならば収益力もさぞかしスゴイ・・・かと思いきや、下記のとおり・・・。上記の時価総額に似合わず(?)テスラの売上高はわずか70億ドル程度と、トヨタ(2500億ドルあまり)の3%にも及びません。さらに愕然とさせられるのが利益水準。テスラの2016年12月期の営業損益は6.7億ドルの「赤字」です。しかもテスラは確認できた範囲では2012年12月期から5事業年度連続で営業損失を計上中・・・
で、このテスラという会社、当然ながらおもに電気自動車(EV)を売っているわけですが、ではいったい販売台数はどの程度か、というと、2015年通期で5万台、2016年は7.6万台ほど。ちなみに現時点で世界でもっとも販売台数の多いEVはテスラ車・・・ではなく日産の「リーフ」で、2010年の販売開始からすでに25万台以上を売り上げています。ルノー・日産グループ全体では、少し前に同グループに加わった三菱自動車の「アイミーヴ」を加えると昨年末時点で約42.5万台と、EVマーケットでは同グループがナンバー1。もちろん単独でも日産自動車はEVを含めた販売台数の合計が542万台(2015年)にも達する、世界でも指折りの大メーカーです・・・
以上のように、販売台数(それもEVだけで見た台数)、売上高、営業損益などなどの業績パフォーマンスでは日産の足元にも及ばないテスラ・・・。にもかかわらず時価総額だけは日産を凌駕する規模に膨らんでいるわけです。どうひいき目に見ても・・・って「それはテスラがすでに『モデル3』40万台の受注を得ているうえ、来年に発売する予定の『モデルY』への期待が高いからだ!」なのかな~? すでに予約販売を受付中のモデル3すら、7月に生産を開始して今年末に発売ということで、多くの人がいまだに実物を見たことすらないうえ、同社の生産能力(今年は週5千台を予定とのこと)などからして、ちゃんと約束どおり納車できるかも分からないような気がしますが、大丈夫なのでしょうか?
そんなことも含め、テスラ株もまた成長への「期待」という名の米投資家の「捕らぬ狸の皮算用」でスゴイことになっているんだな~と勝手に嘆息するばかりです・・・