パイプ煙草を始めた頃、最初に吸っていたのが着香だったせいか、どうしても私はアロマティック煙草に帰っていく傾向がある。一番パイプらしいと感じてしまうし、何と言っても最初に開封した時のワクワク感は、着香に勝るものがない。
マクリントックというブランドには、オレンジ・ドリームでかなりお世話になっている。その他にもクレーム・ド・カシスなんかが好きだ。パウチもので、気軽に楽しめる。
今回は日本でお目にかかれないブラック・チェリーを試してみる事にした。缶入りのマクリントックを買って吸うのは、記憶する限り始めてだと思う。
一年ほど前になるか、ピーターソンのコーンメイラ・ブラックというチェリー系を試した後、チェリーはもう当分吸いたくないという気分になっていたのだが、最近になって、やはり着香の醍醐味はチェリーなんじゃないか?という不思議な気持ちに囚われている(バニラなんじゃないか?洋酒系なんじゃないか?など、これまでも時期により様々に変化しているので、この気分も一過性のものだと思う)。
さて、このマクリントック・ブラック・チェリーの感想。
チェリーっぽさが足りない。実に味わい深いブラック・キャベンディッシュで、申し分なく旨い着香煙草なのだが、チェリーを期待して買うと、がっかりするだろう。むしろ珈琲系の着香寄りと言っても過言ではない。ひょっとしたらチェリーの着香はこの珈琲の苦味と相殺されてしまっているのかも知れない。
さて、ルームノートの方はと言えば、着火直後はかなり周囲に甘い匂いを撒き散らすようであるが、すぐに鎮静してしまい、ボウル中腹ぐらいまで吸い進んでしまうと、ほとんど香らないようだ。前述したEGRのような煙草臭さもない。
つまり、チェリー着香特有の、周囲を振り向かせる能力は極めて弱い方の部類だと思う。
喫味、香り、おしなべてこの煙草を評価するなら、インパクトには欠けるが、じんわりと旨い煙草で、常喫向きである。ただし、私はこの煙草を自分の常喫銘柄にする気は今の所ない。断言は出来ないが、長く付き合える気がしないのである。
ただし、この煙草の風味は最初の1ボウルを吸った時よりも複雑であるという事に、2ボウル目以降に気付いた。更に3ボウル目には別の発見もあった。
去年の大煙会かパイプショーで貰ったブレンド用のラタキアが大量に残っていたので、ほんの少し、5:1ぐらいで混ぜてみた。
すると、不思議とこの煙草は、ラタキアと喧嘩しない。ラタキアを埋没させてしまう事もない。もっとチェリーがハッキリとしていたら、確実に喧嘩してしまい、混乱した風味になってしまうだろう。
例えば、最近1年ぐらいラットレーの着香ものを旨いと思って吸っているが、ラタキアを混ぜようという考えは脳裏を過る事すらない。明らかに着香と喧嘩してしまうのが目に見えているからである。
この煙草は即ち、思ったよりも懐の広い煙草だという事だ。
この50グラム缶がなくなる迄には、更に新しい発見があるのかも知れない。その時点で最終的な判断をしよう。また買って吸うかどうか。