ある時、弟子が師の道元に聞いた。
「人間はみな仏性を持って生まれていると教えられたが、
仏性を持っているはずの人間に、なぜ、成功する人としない人が
いるのですか?」
道元の答えは、
「成功する人は努力する。
成功しない人は努力しない。その差だ。」
弟子は、ああそうか、と、大喜びした。
だが、その晩、疑問がわいた。
仏性を持っている人間に、どうして、
努力する人、しない人が出てくるのだろうか?
翌日、弟子はまた師に聞いた。
「昨日わかったつもりになって帰りましたが、
仏性を持っている人間に、どうして努力する人、しない人が
いるのでしょうか?」
道元の答えは、
「努力する人には志がある。しない人間には志がない。その差だ。」
道元の答えに大きくうなずき、家路につく。
しかしその晩、またまた疑問がわいた。
仏性のある人間にどうして志がある人とない人が生じるのか?
弟子は、師に問うた。
道元は言う。
「志のある人は、人間が必ず死ぬということを知っている。
志のない人は、人間が必ず死ぬということを本当の意味で知らない。
その差だ。」