『長く暗い魂のティータイム ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』 | First Chance to See...

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 ダグラス・アダムスによる、『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』シリーズの2作目。原著Long, Dark Tea-Time of the Soulが発売されたのが1988年だから今からちょうど30年前になるわけで、いやもうほんと、待ってて良かった、生きてて良かった!

 

 

 前作同様、不用意なネタバレなしにあらすじを紹介するのが困難な小説ではあるけれど、表紙のイラストを見れば分かるように、今回の小説には北欧神話の神々が登場する。「神が不老不死ならば、今もこの地球上のどこかで生きて暮らしているはず」というのが、本書の根幹となっているアイディアだ。このアイディアをどの程度「アダムスの独創」と看做していいかはわからないけれど(私が知らないだけで似たような発想で書かれた先行作品がいろいろあってもおかしくない)、ニール・ゲイマンの『アメリカン・ゴッズ』(2001年)やマリー・フィリップスの『お行儀の悪い神々』(2007年)あたりは『長く暗い魂のティータイム』の影響を受けていると思う——あるいは、ネタがかぶらないよう意識して書かれていると思う。

 

 ……ただ、あれから30年経つと社会事情もいろいろ変化するもので、今回の『長く暗い魂のティータイム』でイマドキの若い読者が一番面食らうとしたら、「携帯電話がない」ということより「ロンドンではピザの宅配がない」ということではなかろうか。今じゃロンドンでも当たり前のように行われているが、当時は本当になかったみたいね。

 

 あと、この小説の中で印象的に登場するセントパンクラス駅も、今ではきれいに改装され周辺もすっかりオシャレになったようだけど、アダムスがこの小説を書いた当時はもっと暗くて荒んだ感じだった。本書のあとがきにも書かれている通り、セントパンクラス駅と一体化して建てられたホテルが1935年に閉鎖されたまま放置されていたため、「ロンドンのどまんなかに、大きなホテル(それも見ようによってはおどろおどろしいゴシック建築だ)の廃墟がいわば屍をさらしていた」。

 

 というわけで、ここからは年寄りの自慢話です。私は原著が出版されてから約2年後にロンドンに行き、本書の25章に出てくる行程を実際に歩いたことがあります。えっへん。で、その時に撮影した写真がこちら。

 

 

 

 ……自慢、と言い切った割に色褪せてて見にくい写真だけど、数十年前にフィルムで撮影して写真屋さんで焼いてもらった写真だもの、イマドキのデジタル写真と違って経年劣化してても仕方ないじゃないかーーー!