松坂が出て行って
 思いもかけず
 一人きりになったゆづるは
 すっかり気分が
 落ちてしまい料理を
 食べる気になれない。
 取り残されて
 ゆづるは理性で考えて、
 感情のまま
 言い過ぎたと後悔した。
 しかし
 今追いかけるなら、
 まだ謝れると立ち上がり、
 次の料理が
 運ばれてきたが、
 ゆづるは個室を
 飛び出て松坂を追った。
 もう既に支払いも
 済ませて松坂は
 外に出て行った。
 不安で焦ったゆづるは
 路地裏に佇む
 会員制の店から
 慌てて駆け出し、
 人通りの多い表通り
 に出ると、急いで
 松坂の姿を探して
 左右を見回した。
 夜で仕事を終えた人々が
 行き来し、ゆづるを
 見る人もいる。
 その中には、
 慌てた為にマスクを
 し忘れたゆづるの顔を見て、
 沢村ゆづるじゃないかと、
 指差し寄って来る
 若い女の二人組みが
 目の端に映りゆづるは
 急いで逃げた。
 一度横道に曲がって
 マスクを着けると、
 通りに戻って松坂の
 姿を探した。
 今素直に謝れば
 許してくれるんじゃ
 ないかと思うのに、
 松坂をこれ以上
 好きになっていいのか
 わからず迷う自分もいる。
 松坂を好きになって
 冬馬を忘れるのが
 怖かった。
 通りを歩いていても
 ゆづるの心同様に
 どっちに行けばいいか
 もわからなかった。
 松坂は自分の車で来たのか?
 タクシーで来たのか?
 他愛のない話すら
 する前のケンカだった。
 見える限りは松坂は
 どこにもいなかった。


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