彫刻家 清水直土さん 第2回 | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

皆様、こんにちは。
みんなの学び場美術館館長 日下育子です。

本日より作家インタビューはお一人の作家について2回掲載、毎月お二人の作家を紹介する
スタイルに一新してお届けしてまいります。

本日の登場作家は彫刻家の清水直土(しみず なおと)さんです。


清水直土さん
2015年 個展「清水直土は個展まつり」 フライヤーより


清水直土さん
第1回  、 新聞取材記事 「エスプリと毒」、「ニヤリと哀愁」
 
 

2回目の今日は、清水さんが社会との接点について思うこと、「あなたにとってアートとは?」について

お聴きしました。

どうぞお楽しみ下さい。

 

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母校・宮城農業高等学校ボクシング部への寄贈作品


作品制作の思い

この作品は、左腕で相手の右ストレートをブロックし、自分自身の右ストレートを

打ち返す瞬間を表現しています。

東日本大震災という大変な出来事が起き、私たちはこれまでにない大きな痛手を

負いましたが、そこから立ち上がり、自分自身の渾身の右ストレートを打つイメージで

制作しました。自分を育ててくれた母校、ボクシング部も津波によりも被災したため、

激励の思いを込めて、特別に寄贈させて頂きました。

 





IMG_0305 700    2015
「直土の『と』」
H42×W32×D29
黒御影石

作品制作の思い
僕の名前の「直土(なおと)」ですが、幼少期から「直人」や「直士(なおし)」に
間違われることがよくありました。「『ただし』?」と聞かれたこともあります。
僕は、慣れっこで特に気にしていませんでしたが、に両親、特に母が機嫌を
損ねていたので、「僕の名前は「なおつち」で「直土」です。」という作品を
つくりました。






「さぁ引越だ♪さぁ引越だ♪」

 

H136×W37×D35
黒御影石、檜、アクリル絵具

77回河北美術展 東北放送賞 

2014

 






「ダンシングヒーロー」700

「ダンシングヒーロー」

 H102×W90×D25
白御影石







くじゃく
「くじゃく」

H44×W27×D29
黒御影石
52回宮城県芸術祭彫刻展

2015

 





「joy」700
joy

H55×W31×D44
伊達冠石
53回宮城県芸術祭彫刻展 河北新報社賞 

2016







通信販売サイト「ステキなアート」出品作品 「バカ野郎だるま -春-」700

「バカ野郎だるま --

H23×W18×D19
黒御影石

「ステキなアート」出品作品

 

 






「バカ野郎だるま」シリーズ群像ver

サイズ…大きい物でバレーボールくらい、

      小さい物でソフトボールくらいの大きさ

 








第80回河北美術展 東北電力賞 「baby」700 2017
baby

H166×W43×D31
伊達冠石
80回河北美術展 東北電力賞 

2017

 







「鼻歌」

H57×W45×D21
黒御影石


作品制作の思い
踊るように、リズムを刻むように、歌をうたうように、

音楽を奏でるように、鼻歌をうたうかのように制作しました。







日下

清水さんが制作や発表の時に、社会との接点について意識することがありましたら聞かせて下さい。

 


清水直土さん

僕は20152月に初めての個展を開催しました。

この時が僕の創作活動の中で最も社会との接点を意識した時だと思います。

 

大学卒業後、様々なアルバイトを経験してきましたが、その都度タイミングを見計らって職場の方々に

自分の創作活動の話をしてきました。すると、僕の目の前でこういった会話が行われたことがあります。

友達とのグループ展を控えているときに、「清水君、今度友達と個展やるんだって!」

公募展への出品を控えているとき、「清水君、今度個展に作品出品するんだって!」

「清水さんは、個展で賞取ったことあるんですか?」

 一般の方々はグループ展でも公募展でも作品発表することは個展だと思っているようなんです。

 

 

日下

それは、私もよく言われます。

 


清水直土さん

僕は後々、こういう思いを持ち始めます。「個展とは何なのか?」

 

僕は初めての個展をした際、ギャラリーを二週間借りました。最初の一週間は公開制作と称しての会場

作り
です。 壁3面に壁紙を張り、全体にドローイングを施しました。 正面中心には、大きく僕自身の

似顔絵と個展のタイトル描きました。作品のタイトルも全て壁に書きました。

 

その時に僕は個展とは「自分発表会」なのだと思うようになりました。正面の壁に描いた似顔絵では、

「皆様、本日はご来場ありがとうございます。こんなバカですが、皆様のおかげで元気に生きています。

お父さんお母さんありがとう!」と言っているつもりです。

 

個展期間中、そして終了後に「この個展を思い切ってやってよかった。」と思うことがたくさんありました。

特に印象的だったのは、期間中、ギャラリー入り口には現在開催中の展示をお知らせする黒板が置いてあります。個展のフライヤーが貼られ、その隅に「なんか元気が出ます。」と一言書いてありました。

 

これはギャラリーのスタッフの方が書いたのだと思います。なんかすごく嬉しかったです。

誰かに元気を与えられたら、それはそれで美術での社会貢献なのだと思いました。

 

 

日下

素晴らしいと思います。清水さんはこれからもその方向性で作っていかれるのですね。

他にも何か感じていること、やっていきたいと思うことがありましたら、お聞かせ下さい。

 

 

清水直土さん

は家族から溺愛されて育ってきた者です。そして幸い、これまで出会う人にも恵まれ元気に生きてきました。なので、家族からとこれまで出会った人たちからいただいた優しさを作品に込めて表現できたらと思っています。

 

 

日下

では、最後に「あなたにとってアートとは?」どんなものでしょうか・

 

 

清水直土さん

「やさしいおせっかい」です。

 

日本画家の千住博さんが、自身の著書の中でこうおっしゃっていました。

「~たとえば、毎朝オフィスに一輪の花を飾るとします。それを見て、だれかが美しいと感じたら、すなわち飾った人の美を通したコミュニケーションです。実はこれで充分芸術です。」

 (※千住博著 「ルノワールは無邪気に微笑む -芸術的発想のすすめ」の一文)

 

大学在学中、ある先生も授業の中で同じようなことを仰しゃっ ていました。

僕はこの言葉にすごく共感しました。今現在も身をもって共感しています。

ただ、自分自身にはまだ、この事がうまく出来ているとは思いません。

「芸術はコミュニケーションである」と言えますが、僕としては、「やさしいおせっかい」です。

 


日下

素晴らしいですね。これからの作品も楽しみにしています。

清水さん、今回は素敵なお話をありがとうございました。



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■清水直土さん 経歴
1987年12月24日 宮城県仙台市出身
2006年 三島学園東北生活文化大学入学
2008年 第72回河北美術展入選(以後、73、75、78、79回 入選)(仙台藤崎)
2010年 第42回東北生活文化大学生活美術学科 卒業制作展 買上賞(せんだいメディアテーク)
    新現美術協会60周年記念展 せんだいアートフェスティバル2010 SHINGEN「若手アーティスト
    招待展」(せんだいメディアテーク)
2014年 第77回河北美術展 東北放送賞 (仙台藤崎)
2015年 第一回 清水直土個展「清水直土は個展まつり」 Gallery TURNAROUND
         第52回宮城県芸術祭彫刻展 せんだいメディアテーク)
2016年 第53回宮城県芸術祭彫刻展 河北新報社賞(せんだいメディアテーク)
2017年 第80回河北美術展 東北電力賞(仙台藤崎)

■今後の発表予定
◇第54回 宮城県芸術祭彫刻展
 場所:せんだいメディアテーク6階
 開催日時:平成29年9月29日(金)~10月4日(水)
 入場料:一般500円/大学生・割引250円


◇第81回 新制作協会彫刻部公募展  
開催日時 2017年9月20日(水)より10月2日(月)まで 休館日は9月26日(火)
10:00-18:00(入場は17:30まで)  金曜日は20:00終了(入場は19:30まで
会場 国立新美術館 http://www.nact.jp/
〒106-8558  東京都港区六本木7-22-2


■清水直土さんの情報がご覧になれるWEBサイト

◇「みんなの学び場美術館」作家インタビュー 彫刻家 清水直土さんの新聞取材記事
  ⇒https://ameblo.jp/mnbb-art/entry-12308516235.html


◇彫刻家?清水直土第一回個展「清水直土は個展まつり」  

  ⇒http://turn-around.jp/sb/log/eid419.html


◇第77回河北美術展
 ⇒http://www.kahoku.co.jp/busi/art/art2014/sculpture.html


◇ステキなアート(通信販売サイト)
 ⇒http://www.sutekinaart.com/s.asp?au=201060282


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編集後記

2017年9月より、作家の皆様を読みやすく分かりやすく紹介するため、インタビューのスタイルを一新
してお届けすることになりました。

 その最初となる今回は私からのリレーで彫刻家 清水直土さんにご登場頂きました。
大学の後輩にあたる方ですが、高校時代にはボクシングで東北総体優勝、インターハイでベスト16という異色の経歴の持ち主でもあります。

 今回は清水さんの社会との接点として、2年前の個展の時に考えたこと感じたことをお話頂きました。
その個展は私も拝見したのですが、清水さんが「自分発表会」と言い表している通り、個々の彫刻作品も、
壁に描かれたドローイングも、会場の空間全体が非常にパワフルでファンキーじで私は「ド肝を抜かれた
のでした。 特に「直土の『と』」という作品が印象に残っています。

 石という彫刻の伝統的素材は、重厚な題材、表現で用いられることが多いのですが、清水さんはそこに
とらわれずのびのびとご自身の表現を楽しんでいらっしゃるように思います。 一方で、彫り方の手法に
注目するとほとんど電動工具を使わない手彫りの表現で、そのノミ目の美しさに感動を覚えます。 

 題材の面白さと手彫り技術の精緻さ、まっすぐで力強い清水さんの作品がこれからどんな風に展開して
いくのかとても楽しみです。

 次回は清水直土さんからのリレーで、彫刻家 清水玄太さんにご登場頂きます。
どうぞお楽しみに。
 
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本日もご訪問、ありがとうございます。