第158回(2017年下半期) 直木賞候補作です。以前から注目している作家の彩瀬まるさんの短篇集。現実の世界とちょっと違っている部分が新鮮で、人と人との関係をよりいっそう深く浮かび上がらせます。
帯文が作品に共通する、登場人物の語り手と相手との距離感をズバリ表現していて唸ります。
遠ざかるほど、愛に近づく
くちなし
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2017年10月発行
収録作品
くちなし
花虫
愛のスカート
けだものたち
薄布
茄子とゴーヤ
山の同窓会
別冊文藝春秋に2015年から2017年まで掲載された作品と
書き下ろし1作。
現実世界とちがう設定が描かれているのは、こんなかんじです。
別れた不倫相手の左腕と暮す
運命で結ばれた恋人に会うと体に花が咲く
蛇になり愛する者を捕らえて食べる女
お腹に卵を抱え、産卵する女、乳母になる女、怪獣になる男
これで全部は説明しきれていないのですが…
でも、このような設定が「すべて」ではない。いわゆるファンタジー作品ではありません。物語のスパイスになっているのはまちがいないのですが、メインではない。
不思議な世界の設定がないものもあります。
「愛のスカート」は特に好きな作品で、自分でお気に入りの作品を選んでアンソロジーを編むとしたらぜひ入れたい一作です。
またマイ・アンソロジーを作ってみようかな。
「茄子とゴーヤ」では、ゴーヤの調理方法が出てきますが、みょうがを合わせるのは知っていたけれど、そこに塩昆布!おぉ!これは夏にぜひやってみないと。
夢中で読めた作品集でした。
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