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rain* ~BL only~

BLオリジナル小説オンリーブログ。 やおいが生き甲斐。BLは浪漫です!!

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17 そして花束をきみに/R18

そして最後の約束を果たすときが、来た。






結局、光輝は泊まりに来た。
あれだけ恥ずかしがっていたくせに、電気を消したとたん、体温がまざりあう距離になっていた。ふれる唇は熱く、ほのかに力を込めてついばまれ、言葉にできない気持ちというものにこんなにもたくさんの種類があることを知る。

時折ささやかれる名前が、許しを請う音に聞こえる。
二人にまだ会話がなかったころ、光輝は「好きです」しか言わなかった。
今となっては懐かしくさえ思う。
「あ・・・」
光輝の髪に指を差しいれると、それだけで幸せそうな吐息をもらす。
暗闇の中でも、瞳がうるんでいるのが分かる。
幼いころの思い出を、どれだけ彼が胸で温めていたか、それが彼の中でどういう温度だったのか、重ねた唇でわかるというのも不思議な気持ちだった。
恐る恐る触れてくる掌に、唇を寄せる。
びくりと身に何かが走ったような反応を示す光輝に、自分は微笑みかけていたそうだ。
すべてが終わった後、 なんであのときわらってたの と、寝起きのような声ですねられて知る。
2度目の触れ合いは、はじめての時のような早急さはなく、ただお互いに優しくできたと思う。
ゆっくり、静かに撫で上げる指と、震える声が、光輝いわく「甘やかされてるみたい」だそうだ。
この期に及んで・・・とは我ながら思うが、光輝の熱を身のうちに受け入れるのは、ひどく抵抗があった。
でも、あまりにも光輝が幸せそうにため息をつくものだから、男としての矜持がどうこうとか、それこそ『この期に及んで』だと思う。
「んっ」
切なそうに声をもらすのはむしろ光輝のほうで、これではどちらが犯されているのか、わからない。
「きどさ・・・」
「・・・っ。」
「もっと、ぎゅって」
して、という声はかすれて、風のように耳をかすめる。
吐精された瞬間、他人の熱を深いところで感じることの不思議を思う。
終わった、と思っても、光輝は体を離さない。
そのまま木戸の中にとどまり続け、そうしているうちにみるみる熱を帯び、再び硬度を増していく。
それを身の中でつぶさに感じ取り、その元気さに半ば呆れもした。
男だからこそ、わかる。
ここまで立て続けに・・・ということが、どれだけ昂っている証拠なのか。
身をよじるたびに、粘膜がぐちゅりと水音を立てる。
つながり続けていることを、その音がつきつけてくる。
「光輝」
一度、ふざけて呼んでみた。
つぎの瞬間、信じられない勢いで身の内に放たれ、さすがに少し、引きずられて己の熱も高まってしまった。最中だからいいものを、普段学校でもうかつに名前を読んだら、この始末なのだろうか・・・。


じっくり時間をかけ、そして何度も交わった後、木戸の胸に体重をあずけて光輝がつぶやく。
「終業式の日、あの人と話しました」
あの人、とは誰のことか。
尋ねるより早く、光輝が答えを出す。
「北島さん」
「・・・。」
何を、と問うよりも、やはり光輝の方が早く答える。
「木戸さんが、『そういう意味で好きです』って」
「・・・。」
この場合、何と答えていいのやら。
夏休みに突入していることに、ここまで安堵するとは思わなかった。
「そうしたら、ちょっと不思議でした」
「・・・なにが」
声を発すると、のどに何かが絡んだような声になった。
最中、ずっと声をこらえていたからか、声帯にきちんと風が通らない声。
その声に、ふふ、と笑いを漏らし、甘えるように身を摺り寄せながら光輝は語った。


うそついてましたごめんなさい。
やっぱりオレも、そういう意味できどさんが好きです、好きになりました。

終業式のあと、廊下で見つけた眼鏡姿のその先輩のそでをひき、校舎裏までついてきてもらった。
告げた言葉に、嫌そうに眉をしかめられ、静かに切り出される。
「あの日の食堂での答え、聞かせてもらっていいか」
はじめて北島に話しかけられたあの日、なぜ木戸が好きなのか聞かせろと言われた、あの会話がよみがえった。
あの時は、うまく見つけられなかった言葉が、今は簡単にするすると出る。
子供のころ、辛くて苦しくて息苦しかった毎日で、きどはそばにいてくれた。声すらかけることも言葉もなく、慰める温度を分けるでもなく、ただ黙って、静かにそばにいた。
そのことが、どれだけ嬉しかったか。
初めて出会ったあの日のことを、包み隠さずに話した。

なぜか北島は、傷ついた顔をしていた。

そして、ぽつりと「俺と同じだ」と言い置いたのだ。


「・・・?」
その様子を聞いて、木戸に心当たりはない。
同じ?ということは、自分も北島にそれに近いことをしていたのか。
いつの間にか距離が近かった。それ以外に感想がないからこそ、北島の秘められた思いにとまどったのだ。境界線が全く分からなかったから。
けれど同時に理解もした。
初めから、最初から、入り口が違ったのだ。
友情が変貌したのではない、・・・友情が裏切られたわけではない。
大切な瞬間に、彼の何かの琴線に、自分が触れたのだ。
それは、誰が悪いのでも、何かをどうこうできたものじゃなくて、一言で陳腐な言い方をすれば、抗うことのできない運命のようなものだったのかもしれない。
誰も責められないし、嫌悪することもなじることもない。

すべてを聞き終え、北島は静かな声で、敵意のない目を初めて光輝に向けたという。
「ほかには?何を聞いても、もう、驚かないよ」
静かで穏やかな声で、そう聞かれたという。


その話の流れで、嫌な予感がした。
「まさか」
一線を越えました、なんて言ったんじゃなかろうか。
胸の中でうっとりと目を閉じている光輝に、話の先をうながした。
本人は、何度も果てて眠気が襲ってきたのか、けだるそうに、眠りに入る寸前の人間が出す特有の声で、もそもそと話し出す。
「何を聞いても驚かない、なんて・・・いうから、ほんとかなぁっておもって・・・その日、ホームルームで知ったこと、ゆってみたんです」
「・・・?ホームルーム?」
話が変な方向に飛んだ。
木戸が問うた声に、半分夢の世界を覗き込んだ声で、光輝が話す。
「うちの担任のヤマダ・・・」
――――山田先生?
なんで今、そんな話になったんだ?
木戸が問うよりやはり早く、光輝が教えてくれる。
「実は4人の子持ちだったんです」
「えっ!?」
滅多なことでは動じない木戸が、おどろきのあまりに、身を起しかけた。
思ったより光輝の体重が重くて、重力でベッドに縫い留められる。
「しかも4人息子、って言ってたから、全員男みたいで・・・」
「・・・・!?」
「で、ヤマダって旧姓だから、いまは、ちがう名前・・・で・・・」
「!?」
気になるパワーワードがいくつも出たところで、光輝がまさかの寝オチだ。
いろいろな意味でパニックになりかけながら、木戸は眠るしか方法がなかった。
もしかしたら、北島と光輝の一騎打ちより、よほど驚いたことかもしれない。
独身のオールドミスだとばかり思っていたが・・・4人の子持ち?
いったいあの女教師は、幾つなんだ・・・?
問おうにも、すやすやと寝息を立てる光輝の顔が、本当に本当に満ち足りた表情をしていたので、木戸はそのまま言葉を封じた。




そして最後の約束が、果たされる。


あるとき、といっても夏休みのさなかだったが、自宅に光輝が現れた。
両手に大きな花束を抱えながら。
それはヒマワリを基調とした明るい花々で、でも誕生日でもない木戸はその豪勢さと不似合いさにひたすら戸惑った。
こんな大きな花束、もらったことはおろか、実際のナマで見たのも初めてなくらいだ。
「・・・?どうした」
「やくそくです!」
満面の笑みは、まぶしいくらいだったが、答えになってない。
「あの日、いつか、あなたに花束を贈るって約束したから」
その言葉に、ひらめくものがあった。


病院で、二人は何度も同じ光景を見た。
窓の外に見える玄関では、長い間入院していた顔なじみの患者が、花束とともに笑顔で見送られていく。
受け取った花束に負けないくらい、自身も笑顔で。
「あれ、なんだろ」
光輝が問えば、けだるげに木戸が答える。
「退院」
「たーいん?」
舌足らずに問い返すと、絵本から目も上げずに木戸が説明する。
「退院。病院から、元気になって出る時、ああやってお花をもらうんだ」
「へー」
結局そのシステムについてはよくわからない。
でも。
「じゃあ、にーにが退院するとき、ぼくがお花あげる」
光輝は仲良くなった後半、木戸をにーにと呼称していた。
お兄ちゃん、という意味の幼児語だ。
「にーに、花束あげたら・・・にーに、わらう?」
「・・・。」
「にーに、げんきになる?」
子供の発想というのは変化球に富んでいる。



「あの日から、ずっとずっと、花束を渡したかった」

あれから10年以上。
忘れずに胸の中で温めていた約束。
大好きだから、元気になってほしくて。
ただ、それだけで。
好きに理由も種類も関係なかったあの頃。
変わってきたものと、変わらなかったもの。
光輝が木戸を大好きだということは、変わらなかった。
「きど、たからさん」
玄関先には、木戸と光輝の二人きり。
思いを込めて、光輝が言う。
「あなたが好きです。あなたが幸せだと、オレもうれしい。・・・オレの恋人に、なってください」

想いには足りないけれど、形に見えないところに想いこめて。
いま、あの日の約束を手渡す時が来た。

木戸は一瞬まよって。



でも最後には、花束を、受け取った。

光輝の、笑顔ごと。

――――end.






「この輝ける~」を書いていて、あまりにも話の展開が暗すぎて、明るく好きってだけ叫んでいるような話がいい、そういうのが書きたくてたまらない、という勢いだけで書き上げました。

これでも様々なところで死ぬほどBLを書いて生きてきた私ですが、年下の攻めを書いたのは、実は生まれて初めてでした・・・。
おかげさまで、ちょっとぎこちない。意外と難しいですね年下攻め。勉強になった。

実はこの話も、あの話も、どこかでつながっている、というどうでもいい俺設定がございます。
ヤマダは、みなと達の母です。めちゃくちゃどうでもいい話。
そのほかどうでもいい設定として、北島は受でした。(!)

好きなものを好きなだけ書けて、楽しかったです!!
でもあれもこれも書きたい。
また新しいお話、もしくは「この輝ける~」の続き、さては今回の登場人物たちのその後など、ひたすら楽しんで書かせていただきますので、よろしければ、遊びにいらしてください。



2017.11 胡蝶 拝




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