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2017年8月 9日 (水)

蒸気機関車は走る

いよいよ、8月10日、東武日光線でSL「大樹」が走る。
SLが走る路線は全国でも数えるほどしかないので大いに期待歓迎している。
 
数年前、東海地方の市長が
町おこしでSLを復活させる取り組みに着目し
 
「宇宙船が飛ぶ時代、SL(蒸気機関車)を修復するくらい容易い筈だ」
 
と発言し、話題になった。
この発言に対するアンサーは技術的観点からすれば「とんだ見当違い」である。
SLの復活は大変な困難を伴う。
部品の規格が現在と違うし、それを作れる職人がもう居ないので、
少しでも機械をかじったことのある者なら、手間が何重にもなるのは
痛いほど理解できる話だ。
 
市長の発言は、結果的に批判を招いたが 
工業遺産伝承の諸問題を周知出来た、という点では
大きな一歩と感じる。
  
そうして大変な困難を乗り越え復元されたSLは、昨今、子供達や家族連れに大人気で
憧れ、優美さ、ノスタルジーという視点で語られがちだが
一部年配者は顔をしかめ、 
 
「あんなもの復活されても、戦後の貧しく苦しかった思い出しかない」と語る。
 
万人に受け入れらるのものなど存在しない。
 
されど、機械は機械である。
技術者の視点では、機械というものは
常にニュートラルな存在である。ゆえにひたむきになれる存在なのだ。
これを、女性に説明するのは非常に非常に難しい。
 
失われかけた工業遺産を残してゆく。
100年後、200年後においてどう扱われるか、わからないけれど、
ただ、ひたむきに、機械と向き合う人たちがいる。
そうした人たちは市長や妻や年配者の発言にも負けずに
工具を持った手を休めず、きっと、こう言うのだ。
 
「それでいい」と。
 
蒸気機関車は走る。

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