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医療現場の対話環境の改善」今日の論考

2016-12-07 | 今日の論考

医療現場の対話環境の改善」今日の論考

●医療ミス
かつて、2人の手術患者を取り違えて間違った手術をしてしまった事故があった。あまりのミスにまだ我々の記憶に残っている。その過去の点滴ミスや手術ミスなどさまざまな人為ミスによる医療事故が各地から報道された。医療事故は、被害者が一人のことが多く、したがって、よほど特異なケースでないと、マスコミで報道されることがない。
しかし、医療現場でのその数は少なくないようである。訴訟件数は、年々増加して95年度は2244件(最高裁まとめ)とのことである。1件の重篤な顕在事故の背後には事故寸前で気がついてという「ひやりはっとケース」が300件くらいあるとされている(ハインリッヒの法則)。事故防止のためには、その「ひやりはっとケース」にまで踏み込んだ包括的な対策を講じなければならないが、ここでは、医療現場での対話環境の改善という観点から、人為ミスによる医療事故の防止策を考えてみたい。

●医療現場の対話環境
 対話環境をより良質のものにするためには、医師・看護師と患者との間に情報の共有が、まず必要となる。なぜ、その医療行為がその患者に必要なのかを、行為の大小を問わず、また行為のたびに、十分に説明するようにしてほしい。
 一つの具体的な提案は、患者との接触がもっとも頻繁な看護師が、責任を持って対話ができる範囲(権限)を拡大することではないかと思う。現状は、ほんのちょっとしたことをたずねても、「先生に聞いてください」と逃げられてしまう。これは、対話拒否の強烈なメッセージになってしまう。あげくは、「先生は3分間診療」で忙しくて、聞く耳持たずでは、何おか言わんやである。
 第2に、ともすると一方的になりがちな医師からの「説明と説得」から、患者の疑問や意見などを積極的に受け入れる姿勢をみせてほしい。 ただでさえ、病気は患者をしてすべて医師・看護師におまかせという気持ちにさせがちである。ましてや医療現場が対話不在の雰囲気に満ち満ちていれば、もはや患者は絶望的な気持ちにさえなってしまう。言われるがまま、なされるがままとなって、せっかくの生身の患者からのミス・チェック機構が機能しなくなってしまう。
 
●せめて普通の会話環境でもあれば
ここでの一つの具体的な提案は、せめて「会話」だけでも、もっと活発にすることではないかと思う。「名前のある」相手とのさりげない会話には、相互のやりとりの活性化や場の雰囲気をリラックスさせる効果がある。対話の入口として効果的である。あまりに静かすぎる医療現場が多すぎないか。効率や多忙さを言い訳にしてはならない。
 なお、対話環境の改善は、医療従事者側だけではできない。患者側も変わらなければならない。インフォームド・コンセントが一般化し自己責任の原則が医療でも求められる時代になってきている。このことをしっかりと認識した上で、医療現場で
みずからの思いを率直に表現し、医療従事者と対話ができるようにならなければならない。
 医療行為も、医療従事者と患者との生身のかかわりである。当然、そこには対話がなければならない。このことを踏まえた医療現場の構築が、人為ミスによる事故を減らすことだけでなく、患者中心の医療を行なうことにつながるはずである。










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