(落語の出囃子が流れる)


落語家
「(袖からやってきて、高座に座り、一礼)
 えー、本日はみなさま、遠方からお越しいただき、ありがとうございます。
 たくさんのお客様がいらっしゃって、私、感激の極みでございます。
 しかし、これだけたくさんのお客様がいらっしゃっても、
 高座からは一人一人のお客様の表情が見えるものです。
 笑ってる方・・・、泣いてる方・・・、居眠りをしている方・・・。
 様々でございます。
 わたくし、居眠りをしている方には容赦はいたしませんので、よろしくお願いいたします。
 さて・・・」

ウェイトレス
「(袖からやってくる)すみません。」

落語家
「・・・はい?」

ウェイトレス
「大変申し訳ありません。
 本日、高座の方が混み合っておりまして、相席をお願いしたいのですが・・・」

落語家
「相席・・・?」

ウェイトレス
「・・・よろしいですか?」

落語家
「相席・・・。」

ウェイトレス
「はい。」

落語家
「えーと・・・、どうぞ。」

ウェイトレス
「ありがとうございます。
 (舞台袖に向かって)お待ちのお客様、こちらへどうぞー。」


(落語の出囃子が流れる)


落語家2
(袖から出囃子に乗せてやってきて、落語家1の隣りに座る)

落語家1
「(噺家2の方を向いて)・・・。」

落語家2
「(噺家1の方を向いて)・・・。」

落語家1
「(噺家2の方を向いて)・・・。」

落語家2
「(客席を向いて)えー、毎度馬鹿馬鹿しいお話を・・・」

落語家1
「続けるの?!
 この状況で噺続けるの?!」

落語家2
「何なに?
 どうかしました?」

落語家1
「『どうかしました?』じゃないですよ!
 どうかしましたよ!」

落語家2
「何がありました?
 困ってるんなら、話に乗りますよ?」

落語家1
「困ってますよ。
 ・・・この状況に!」

落語家2
「私もねぇ、困ってたんですよ。
 朝、ちょっと一席設けたいなぁと思って、寄席に来たんですけど・・・。」

落語家1
「自分の話始めた・・・。」

落語家2
「びっくりですよ。
 高座が空いてないっていうんです。」

落語家1
「落語って、そんなフラッとできるものじゃないと思いますけど。」

落語家2
「そしたら、受付の人に『相席ならいいですよ』って言われて。」

落語家1
「いや、そもそも何ですか?相席って制度。」

落語家2
「こっちは落語が話したくて話したくて仕方なかったんで、
 『相席でもいいです』って答えたんです。」

落語家1
「『落語が話したくて話したくて仕方ない』状況って何ですか?
 落語欲みたいなものですか?」

落語家2
「なかなか相席に応じてくれる方がいらっしゃらなかったんですけど、よかったです。
 相席OKの人がいて。」

落語家1
「いや、私は落語における『相席』の意味がわからなかったから・・・」

落語家2
「(客席に向かって)えー、毎度馬鹿馬鹿しいお話を・・・」

落語家1
「だから、勝手に落語を始めるなって!」

落語家2
「何ですか?何か不満でも?」

落語家1
「『何か不満でも?』という問いかけに対しては、『はい、あります。』ですよ!
 愚問ですよ!」

落語家2
「どうしたんですか?」

落語家1
「これ、独演会ですよ、僕の。」

落語家2
「はい。」

落語家1
「初めての。」

落語家2
「はい。」

落語家1
「ずっと楽しみにしてたんです。」

落語家2
「はい。
 (客席に向かって)毎度馬鹿馬鹿しいお話を・・・。」

落語家1
「するなって!」

落語家2
「何で止めるんですか?」

落語家1
「僕がするんです!
 毎度馬鹿馬鹿しい話を!」

落語家2
(目の前のボタンを押す)

チャイム
「ピンポーン。」

落語家1
「・・・?」

ウェイトレス
「(舞台袖からやってくる)お呼びでしょうか?」

落語家2
「瓶ビール。」

落語家1
「ファミレスか!」

ウェイトレス
「かしこまりました。」

落語家1
「かしこまっちゃダメ!
 なんで、店員呼ぶボタンがあるの?!
 相席といい、ボタンといい、何このシステム!」

落語家2
「もう飲まないとやってられないっすよ。」

落語家1
「飲みたい気分なのはこっちの方だよ!
 初めての独演会を相席されて、相席相手がのんベェって!」

ウェイトレス
「(舞台袖からやってくる)瓶ビールお待たせしました。」

落語家1
「瓶ビール来ちゃった!」

ウェイトレス
「グラスお二つでよろしかったでしょうか?」

落語家2
「飲みます?」

落語家1
「飲むわけないだろ!」

落語家2
「一応二つ。」

落語家1
「何でだよ!」

ウェイトレス
「かしこまりました。」

落語家1
「だから、かしこまっちゃダメ!」

落語家2
「さっき、『飲みたい気分なのはこっちの方だ』って言ったから。」

落語家1
「今すぐ飲みたいわけじゃないから!」

ウェイトレス
「あの、申し訳ありません、お客様。」

落語家1
「はい。」

ウェイトレス
「本日、高座が大変混雑してまして、相席お願いしたいですが・・・。」

落語家1
「また、相席?!」

落語家2
「いいですよ。」

落語家1
「何でOKしちゃうの?!」

ウェイトレス
「ありがとうございます。
 (舞台袖に向かって)お待ちのお客様、こちらへどうぞー!」


(M-1の出囃子が流れる)


漫才師1
「(拍手しながらやってくる)はいどーもー!」

落語家1
「漫才師?!落語家ですらないの?!」

漫才師1
(噺家2人の前にセンターマイクを置いて立つ)

落語家1
「見えない。君たちが邪魔で僕が見えない。」

漫才師1
「今、僕困ってることがあって・・・。」

漫才師2
「え、何どうしたの?」

落語家1
「僕が困ってるの!僕!僕が一番困ってる!」

落語家2
「(落語家1にグラスを差し出す)飲みます?
 話なら、いくらでも聞きますよ。」

落語家1
「確かに噺は聞いてほしいよ!
 愚痴じゃなくて、噺家としての噺を!」

漫才師1
「じゃあ、僕が噺家やるから、君お客さんやって。」

漫才師2
「了解!」

落語家1
「君たちは君たちで続けてるの?漫才!」

落語家2
(目の前のボタンを押す)

チャイム
「ピンポーン。」

ウェイトレス
「(舞台袖からやってくる)お呼びでしょうか?」

落語家2
「(漫才師2人を指して)彼らにも瓶ビール。」

落語家1
「何だ!お前の目的は何だ!」

ウェイトレス
「かしこまりました。」

落語家1
「だから、なんでかしこまるんだよ!」

ウェイトレス
「あと、申し訳ありません、お客様・・・。」

落語家1
「何?どうしたの?」

ウェイトレス
「相席を・・・。」

落語家1
「また、相席?!」


(一時間半後)


(舞台上には、噺家、漫才師、マジシャン、パントマイマー、ジャグラー、
 ダンサー、モノマネ芸人、猿回し、堺正章などたくさんのエンターテイナーが上がっている)


落語家1
「(グラスを片手に)こうなったらねぇ、もうヤケれすよ!
 他に舞台に上がりたい方はいないれすか?!」

落語家2
「(グラスを片手に)なんか、リンボーダンサーが会場探してるみたいれすね。」

落語家1
「うーんとねぇ・・・、呼んじゃえ!」

落語家2
「さすが!よっ!社長!」

落語家1
「どんどん呼んじゃって!
 上がりたい方はどんどん来て!

 僕の独演会、懐広いから!」

落語家2
「あ、なんか興行主から大入り袋が出るみたいれすよ。」

落語家1
「え、大入りなの?
 お客さん、そんなに入ったんだ。」

落語家2
「いや、演者で大入りみたいです。」

 

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

『落語』と『相席』というワードを組み合わせた発想から生まれたコント。

最初の相席後の妙な沈黙は実演向きですが、終盤の表現は実演向きではないという不思議なコントになりました。

 

11月は新作コントを連続4本公開しました。

来週からは再びお題コントを交えつつ、コントを公開していきます。

お題は随時募集中です。いつでもどうぞ。

 

 

【上演メモ】

人数:5人以上

落語家1

落語家2

ウェイトレス

漫才師1

漫才師2

 

所要時間:4分~5分
難易度:★★★★★
備考:後半の登場人物が一気に増えるシーンはエキストラが大量に必要です。

それぞれが芸人である必要であるため、この部分は人を集める意味で難易度高いです。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】ショートコント
【コント】ビフォーアフター
【コント】モデルルーム#2
【コント】男子100m走
【コント】午前0時のシンデレラ

 

 

 

 

【お題募集中】

お題コントのお題を募集しています。

採用の際には、ささやかながら、当ブログから採用者様のブログへのリンクを張らせていただきます。

(内容によっては、ご期待に沿えないこともございます。ご了承ください。)

 

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(もふもふって名前ですが、僕です。

コントのこともつぶやきますが、コント以外のこともゆるくつぶやいています。)
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