5~6歳の女の子とお父さんが2人でバスに乗っていました。 

 

女の子がお父さんに話しかけます。 

 

「かなえちゃん、おるやろ?」 

 

お父さんはスマホをさわりながら返事をします。 

 

「は? 誰?」 

 

「か・な・え・ちゃん! 知らんのーっっっ!?」 

 

なんで知らんの? って言うか、知らんってどういうことよ! お父さん! という勢いです。 

 

お父さんはスマホに一生懸命ですから、淡々と答えます。 

 

「知らん」 

 

女の子は、仕方ないなぁ、教えたるわ、という感じで言います。 

 

「かなえちゃんな、お掃除してくれるんや」 

 

「へー」 

 

ほー。

 

かなえちゃんはお掃除が好きなのか〜、幼稚園児で人の分までお掃除するとは出来た子だな、と思いつつ聞いていました。 

 

「なつこちゃんは? 知ってるやろ?」 

 

「知らん」 

 

「えー! 知らんのーっっっ!?」 

 

お父さんが知らないのは仕方ないよ〜、そこはお母さんと違うからね〜、と、もちろんそんなことは口に出さず、心の中で思っていると、女の子はまじまじとお父さんの顔を見ていました。 

 

そして、あかんわ、お父さん、話にならへん、と思ったのか、外国人が首をすくめるようなポーズをして、窓の外に目をやってしまいました。 

 

きゃー! 待って待って、話、終わり? そこで終わり? 

 

と、私は心の中で大騒ぎです。

 

なつこちゃんって、どんな子なん? 教えて〜! と念を送りましたが、テレパシーは通じず……無情にも話はそこで終了しました。 

 

なつこちゃん、謎のままです。

 

バスが終点に着いて、乗客はみんなぞろぞろと降りて行きます。 

 

そんな中、高齢の女性が2人、座ったままでした。 

 

全員が降りてからゆっくり降りようと考えているようで、立ち上がりません。 

 

女の子はお父さんの後ろについて、2人をチラチラ見ながら降車口まで行きましたが、いきなりダダーッとその2人のそばに走って行きました。 

 

そして、「あのー、ここは終点ですよ?」と、耳もとでささやくように小声で声をかけていました。 

 

大きな声だと恥をかかせると思ったのでしょうね。 

 

女の子って男の子と違うんだなぁ、と思いました。 

 

息子にはなかった女の子の可愛らしさがあって、見ていてほのぼのと楽しかったです。 

 

こちらは半年くらい前のお話です。 

 

男子高校生が2人乗ってきました。 

 

私は一番後ろの席に座っていたのですが、私の隣に2人が腰を下ろしました。 

 

座ると同時に2人は話を始めます。 

 

「なぁ? 〇〇くんのおばちゃんがマネする人、誰やった?」 

 

「ああ、あれやろ? ベロ、ベーッって出す人やろ?」 

 

「そうそう、誰やった?」 

 

「誰やったかな〜?」 

 

隣で聞いていた私はピンときました。 ひらめき電球

 

それは……ジーン・シモンズなのでは! 

 

ジーン・シモンズは、アメリカのロックバンド〝キッス〟のメンバーです。(ちょっと古いので若い方はご存じないかもしれません〜) 

 

デーモン小暮さんみたいなメイクをして、ベーッと舌を出したポーズが世界的に有名な人です。 

 

誰だったか聞かれたほうの男の子は、しばらく考えて、「あ、思い出した!」と元気良く言いました。 

 

「アインシュタインや!」 

 

えええええーっ! ( ̄□ ̄;)!!

 

アインシュタイン! 

 

せやせや、と2人はそこで納得していましたが、聞いていた私はびっくりです。 

 

アインシュタインのモノマネを、息子の友人に披露するお母さんがいるのか〜、と会ったこともないそのお母さんに好感を持ちました。 

 

ユニークだなぁ、面白い人なのだろうな、と思っていると、男の子たちの会話はさらに発展していきます。 

 

「なぁ? アインシュタインって何した人?」 

 

「う〜ん、俺もよう知らんねん……けど……たしか発明家やろ?」 

 

「ふーん、エジソンとかそういうの?」 

 

「そんな感じや」 

 

ん〜〜〜〜〜、おしいかも〜、と思っていたら、急に話題が変わって、 

 

「あ。鼻毛、出てんで。右側」と質問をしたほうの子が言いました。 

 

「えっ! マジで?」 

 

そう言うと、指摘されたほうの子は、手で抜くことにトライし始めました。 

 

このへんかな? みたいに見当をつけて、指で挟んで引っ張る、という方法です。 

 

しかし、適当に挟んでみたところで1本きりの鼻毛はうまく抜けません。 

 

「抜けた?」 

 

「いいや、抜けてへん」 

 

また、しばらくピッ、ピッ、と引き抜く仕草をして、 

 

「抜けた?」 

 

「いいや」 

 

鏡を持っていた私は、貸してあげようか? という言葉が、のどまで出かかったのですが、年頃の男の子が〝鼻毛〟を抜いているのです。 

 

いきなり隣にいた見知らぬ人にトントンと肩を叩かれ、「鏡あるよ? 貸そか?」と言われたら傷つくのではないかと思い、自粛しました。 

 

そうこうしているうちに、降りる停留所に近づいたため、男の子は鼻毛を指で奥へと無理やり押し込み、見えないことをもう1人の子に確認してから降りていきました。 

 

社会に出ると……これは職場や人によるかもしれませんが、鼻毛どころか、歯に海苔がついていても誰も言えない……言いづらい、みたいな状況があったりします。 

 

鼻毛が出ていることをちゃんと教えてくれる友達はありがたいんだよ〜、と、私は心の中で男の子にアドバイスをしました。 

 

バスの中でほのぼのとした2つのお話でした。

 

 

 

 

7月5日から福岡県・大分県を中心に降り続いた記録的な豪雨により、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。 

本日9日の朝まで被害が大きかった地域に激しく降るという予報でしたので、少し落ち着くまでは、お見舞いを申し上げるのは早いような気がして、毎日ニュースを見ておりました。 

北部九州には知り合いも多く、また、被災地の読者の方からもメッセージをいただき、ただただ一心に祈っておりました。 

あちこちの企業やお店で、義援金の募金活動が始まっています。 

私に今できることは募金に協力することだけですので、できる範囲でさせていただいております。 

被災地の方々におかれましては、一日も早い復旧がなされますことと、一日も早い日常生活が取り戻されますことを、心よりお祈り申し上げます。