二人のイケメンアスリートが、紙おむつを手に、笑顔で「一緒にはこう」と宣伝するCMを見ました。
花王の「リリーフはつらつパンツまるで下着」という大人用紙おむつのCMです。
随分以前から放映されていたそうですが、私は最近初めて見ました。
二人はソチ冬季パラリンピックのアルペンスキーで金、銀のメダルに輝いた 狩野亮選手と森井大輝選手だそうです。
高齢者ではなく、ガッチリとした体格のいい30前後の青年二人が笑顔で紙おむつを持っている訳ですから、
日頃、紙おむつに縁の無い私でも釘付けになってしまうほどのインパクトがありました。
垨野選手は小学生の頃に、また森井選手は高校生の頃に交通事故に遭い脊椎を損傷されたそうです。
当事者や関係者の間では「セキソン」と呼んでいる脊椎損傷という障がいは、
交通事故や転落事故など外部からの強い衝撃で脊椎(背骨)を損傷し、
硬い背骨で守られている脊髄という中枢神経を圧迫させてしまったり、切断してしまったことによって、
脳から中枢神経を通じて全身に送られる指令が損傷した部位より下に届かなくなる障がいのことです。
例えが悪いかも知れませんが、わかりやすく言うと、
エンジンにもタイヤにも問題がなくても、
エンジンの駆動をタイヤに伝えるドライブシャフトという棒が損傷していてはタイヤは回転しないのと似ています。
ドライブシャフトなら取り替えればいいですが、
脳と中枢神経は現代の医学では再生させることが出来ません。
ですから脳や足に異常がなくても、立つことができなかったり、歩くことが出来なかったりするのです。
また、損傷した部位より下肢が麻痺する訳ですから、
歩けないだけでなく、尿意を感じにくかったり、小便を我慢するなど尿意コントロールがしにくかったりもします。
その為、ケイソンの方の多くは紙おむつを利用されています。
しかし、中途障がい者にとっては、紙おむつを履くのに抵抗があり、なかなか履けないでいることが多く、
失禁して下着やズボンを汚してしまう経験を誰しもがしているのです。
人前で、そんな目に遭うことを恐れ、外出を避けるようになってしまう方も多いようです。
狩野選手と森井選手も、おむつを履くことに意固地になっていた時期があったようですし、
おむつを履いた自分の姿にショックを感じたそうです。
しかし、おむつのおかげで安心して外出できるようになり、前向きで積極的になれたと言います。
チェアスキーに出会えたのもおむつのおかげだったのではなかったでしょうか。
「おむつを履くことなんて恥ずかしいことじゃない。」
「できないことを嘆くより、できることを楽しもう。」
このCMには、二人からのそんな熱いメッセージが込められています。
これまでの大人用紙おむつのCMと言えば、
上品な高齢者をモデルにするか、
ハードセルと言って、商品の効用を直接訴求するCMが多かった印象がありまが、
このCMでは、より多くの人に、豊かなアクティブライフを楽しんでもらいたい。
花王のそうしたコーポレートアイデンティティを感じました。
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