HMG/FSH製剤の投与量とPGS正常胚率の関係 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、HMG/FSH製剤の投与量とPGS正常胚率の関係について調査したものです。

 

Hum Reprod 2017; 32: 2209(米国)doi: 10.1093/humrep/dex299

要約:2013〜2017年にPGSを実施した、506名(平均年齢37.2歳)、採卵794周期、移植651周期、胚盤胞4034個を対象に、治療成績を後方視的に検討しました。年齢別(35歳未満、35〜37歳、38〜40歳、41歳以上)に正常胚率を検討したところ、HMG/FSH製剤の総投与量(3000単位未満、3000〜5000単位、5000単位以上)、採卵数(1〜5個、5〜10個、10〜15個、15個以上)との有意な関連は認められませんでした。また、妊娠継続率は、HMG/FSH製剤の総投与量、採卵数のみならず、年齢による違いもありませんでした。

 

解説:卵巣機能(予備能)低下につれて、卵巣刺激に必要なHMG/FSH製剤の総投与量が増加します。過去の論文では、HMG/FSH製剤の増加は卵子の質や妊娠率に悪影響であるとの報告がありましたが、最近の論文では否定的で、一致した見解は得られていません。本論文は、HMG/FSH製剤の総投与量とPGS正常胚率の関連はなく正常胚であれば年齢による妊娠継続率の違いもないことを示しています。つまり、卵巣機能(予備能)低下の方には、安心してHMG/FSH製剤を増量して良いことを示しています。

 

HMG/FSH製剤は諸悪の根源であるという意見が一部にありますが、根拠のないものですので、ご注意ください。