☆黄体ホルモンによるLHサージ抑制 その2 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

黄体ホルモンによるLHサージ抑制についての第2弾は、ヒトでのデータです(約半世紀前の論文です)。

 

Am J Obstet Gynecol 1969; 104: 1038(米国)

要約:妊娠歴のない健常女性6名(21〜25歳)を対象に、2周期を通じて血液を採取し、LH濃度を測定しました。第1周期は無投薬、第2周期はノルエチノドレル(5 mg)+メストラノロール(075 mg)を周期開始から毎日投与しました。第1周期で見られたLHサージが、第2周期では完全に抑制されました。LHの基礎値も第1周期より第2周期で有意に低下していました。

 

解説:ノルエチノドレル(5 mg)+メストラノロール(075 mg)の合剤は、1960年に米国で初めて承認されたピルであり、Enovidという商品名で発売されました。ノルエチノドレルが黄体ホルモンであり、メストラノロールが卵胞ホルモン(エストロゲン)です。現在主流のピルとは若干成分が異なりますし、日本では発売されていません。そもそもピルによる避妊効果がなぜあるかを考えた時に、黄体ホルモンによるLH抑制効果が重要であることを本論文が示しています。なお、エストロゲンにはLH抑制作用はありません。

 

ピルによる避妊のメカニズムには下記のものが考えられています(製薬会社の資料から転記)。

1 ピルを飲むと脳は自分の卵巣からエストロゲンやプロゲステロンを分泌しなくてもよいと判断します。その結果、脳から分泌されるホルモンのFSHとLHが減少するため、卵胞は発育せず、排卵も起こりません。

2 黄体ホルモンの働きによって、子宮内膜が十分に厚くならず、着床しにくい状態になります。

3 黄体ホルモンの働きによって、頸管粘液が濃くなり、子宮内に精子が入りにくくなります。

 

下記の記事を参照してください。

2015.4.24「緊急避妊の方法

2013.10.4「☆低用量ピルの違い

2013.6.1「体外受精前周期のピル(OC)のメリット•デメリット その2

2013.5.27「☆女性ホルモン剤を使うのは心配ですか?