Q&A1673 不妊原因は何だった? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2016.8.11「Q&A1179 36歳、胚移植5回、結果が出ません」2017.7.29「☆Q&A1533 低置胎盤・前置胎盤のリスク因子は?」にて回答いただきました。ありがとうございました。次の移植までに特に何もしなくてよいとのこと、大変安心いたしました。先日、妊娠38週帝王切開で無事女の子を出産いたしました。体重が成長曲線の下限ぎりぎりではあるものの、元気に育っております。移植した胚盤胞は5日目(114時間)のもので、胚盤胞になったのは4日目(97時間)でした。この時間の差は何なのかわかりませんが、5日目胚盤胞なので男の子かなと思っていましたら女の子でした。

帝王切開時に、腹腔内の様子を確認してほしいとお願いしました。卵管閉塞(クラミジア既往による)だったのですが、卵管采の癒着はないとのことでした。ただ卵巣が子宮内膜症のようで、ブツブツでコーティングされているような感じとのことでした。今はおそらく妊娠によって改善され、問題ないとのことでした。排卵がしにくかったのではないかとのことですが、これまでクリニックで毎月のように確認し、排卵はだいたい13日目にあったので、腑に落ちません。ただ、クリニックでP4の上がり方が排卵後ゆるやかに上がるようで、あまり良くないとの説明を受けました。基礎体温も、排卵後に一気に上がらず、だらだらと上昇していました。高温期のP4はいつも問題ありませんでした。これまで妊娠しなかったのは、今回顕微授精で授かったこともあり授精障害だったのかなと思いましたが、排卵障害だったのでしょうか。

 

A 基礎体温から得られる情報にはほとんど根拠がありません。また、卵管采に癒着がなくても、卵管内の閉塞はあり得ます。子宮内膜症は間違いなくあったのだと思います。医師の言う排卵とは「卵胞が潰れて卵管に取り込まれること」を意味しており、質問者さんの言う排卵とは「排卵の指令があって卵胞が潰れること」を意味しているのだと思います。卵巣がコーティングされていれば、排卵しても卵管に取り込まれません。なお、自然排卵では、P4はゆっくりと上昇するのが普通です。以上を総合すると、ピックアップ障害か授精障害、あるいはその両方だったものと推測します(あくまで推測です)。