Q&A1732 一度も反応が出ません | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 夫39歳、妻38歳
数年間自己流や通院でタイミングをとりましたが妊娠せず、3年前に人工授精を3回行うも不成功でした。その後、体外受精専門の病院に転院し、自然周期での採卵・移植を4回行いましたが不成功、次の周期よりクロミッドを服用しての採卵では、6個中3個受精→1個凍結不可、1個初期胚移植→不成功、1個胚盤胞凍結しました。5回の移植が不成功でしたので松林先生のブログを拝見し以前から受けたいと思っていた着床障害のオプション検査を受けさせていただきましたが、ビタミンD以外は特に異常はありませんでした。ビタミンDのサプリメントは以前から服用していましたが、値が低かった為現在は1錠増やして服用しています。その後凍結していた胚盤胞を移植するも不成功、次周期にクロミッドを服用し、採卵5個中2個受精、1個顕微授精=凍結不可、1個初期胚移植→不成功、1個胚盤胞凍結中です。
先日の初期胚移植での判定時「グレードの良い受精卵を移植するのが良い結果につながるはず。あなたはいつも一番良いグレードの胚を移植しているのに妊娠しない。ポリープや筋腫があるわけでもないので原因がわからないから繰り返し移植をしていくしかない」とその日の担当の医師より言われました。内膜が薄いなど、不安要素を言われたこともありません。
①通院している病院では、採卵は朝一番・移植は15時からと決まっています。先生のブログを拝見していて着床の窓というものを知りましたが、私の場合は15時では着床の窓が合っていないということなのでしょうか。
②私は通勤のため1日80kmの運転をしています。車の振動が良くないということはありますか(職種は事務です)。
③代謝を良くしようと思い、スポーツジムに通い始めて2年近くになります。初めはウォーキングを目的としていましたが、今では筋トレが中心となっています。移植後の筋トレは良くないのでしょうか。運動はどの程度が良いのでしょうか。
④一度も陽性反応がでたことはありません。不育症の検査をして原因がわかることもありますか。
⑤親戚に韓方医(韓国の漢方?)がいて、去年の6月に韓国に行き診てもらった結果、体質的に身体に合わない食べ物(お肉全般・小麦・淡水魚・にんにく・根菜…などなど)と、合う食べ物(海の魚・貝類・米・きゅうり・なす…などなど)があるからそれを守るように言われました。その後、すべてを守ることはできないものの、お肉は食べず小麦も極力減らすなど努力はしましたが結果として妊娠はしていません。数年前より生理の間隔が短くなり、21日で生理がくることもたまにあります。身体の中が熱い人が生理が短くなると何かのサイトで見たことがあり、韓方医の言う食べ物をみるとすべて身体を冷やす食べ物でしたので、私は冷やしたほうが良いのかと思いました。妊活には温めたほうが良いと信じ、冷えないようにとレッグウォーマーや腹巻をしたりアイスやカフェインをとらないようにしたり運動したりを心掛けていましたが、やはり体質によって冷やしたほうが良い人もいるのでしょうか。食事はどの程度妊娠に影響するのでしょうか。お肉を食べないことを先生はどう思いますか。
⑥現在通院している病院でアスタキサンチンのサプリメントを3ヶ月服用する治験を募集していましたので、今年の5月頃から3ヶ月間服用してみましたが、今のところ変化を感じたことはありません。アスタキサンチンについて先生のご意見はありますか。
⑦仕事で強いストレスを感じることはありますが、それは仕方のないことだと思っています。それでもやはりストレスが一番の原因なのであれば、退職しようとも思っています。ストレスはどの程度影響しますか。

質問が多く、また長い文章になってしまい申し訳ありません。金銭面もあり、治療もあと数回で終わりにする予定でいます。その数回で何とか成功したいため、転院や退職も考えております。先生のアドバイスをいただけましたら幸いです。

 

A 
①着床の窓がずれている可能性は否定できませんが、数時間単位ではなく、1日とか2日という単位でのズレになります。したがって、移植が15時のクリニックも12時のクリニックも変わりません。
②通常の乗用車の振動でしたら何ら問題ないと思います。ただし、バイブレータのような振動を感じるのは良くありません。
移植後の筋トレは良くないという論文はありませんが、移植後の激しいスポーツは控えた方が良いと思います。
④全く結果が出ていませんので、不育検査も含めてオプション検査(慢性子宮内膜炎検査、銅亜鉛検査、子宮収縮検査、25-OH VitD検査)を全て実施することをお勧めいたします。不育症とは流産(あるいは化学流産)を繰り返すことですので、妊娠したことがない方には関係ないと思いがちですが、驚くべきことに、不妊と不育の境界は極めて近いものがあります。詳細は、2017.4.5「☆☆☆当院で実施のオプション検査について」の記事を参照してください。
⑤これまでに発表された全ての論文で、妊活に熱(高温)はダメと書かれています。しかし、冷えに関する論文は私の知る限りではありません。
男性不妊におけるアスタキサンチンの有用性に関する論文はありますが、女性不妊に関する論文はありません。
⑦仕事のストレスは妊娠治療に影響しないと報告されています。しかし、妊娠に関する周囲からの何気ない言動などのストレスは悪影響です。
以上をまとめると、④がクリアされれば①だと思います(慢性子宮内膜炎の検査を高温期に実施されている施設があるようですが、偽陰性になる可能性がありますので、必ず低温期に行ってください)。
なお、卵子の改善策として、DHEAS、テストステロン、25OHビタミンDの採血を行い、不足分を補充することで、改善が期待できますので、こちらの検査もお勧めいたします。

 

なお、このQ&Aは、約4〜5ヶ月前の質問にお答えしております。