音楽ステージの仕事をたくさんさせていただいて、いろんな発表会やコンサートを見てますが、ステージ上でちょっと気になる人がいます。

 

音楽コンサート、特に「ピアノ」では、楽譜をめくる「譜めくり」という仕事があります。

とても重要な仕事です。

 

オーケストラの「指揮者」の場合、片手でタクトを振りながら、自分で譜めくりすることが可能です。

オーケストラの「弦楽器」の場合、人数が多くいて、「2人でひとつの楽譜を見ている」ため、片方の演奏者が一瞬手を休めて、譜めくりをしていて、もう片方の奏者は弾き続けているので、演奏が途切れることはありません。

管楽器の場合、「一人でひとつの楽譜」ということが多いですが、常に吹き続けているわけではないので、楽譜製作者が、「一瞬手を休めている時にめくれるように」楽譜を作ってくれているので、自分で譜めくりができるように、だいたいはなっています。

 

ただ、ピアノの場合、「暗譜」のことも多いですが、長い曲になるとだいたいは譜面を見ながら演奏しますので、譜めくりは必須になります。

 

ちなみに、「譜めくり役」の人のことを「譜めくりスト」と呼ぶそうです。

 

 

昔、有吉さんとマツコデラックスさんの番組かなにかで、これの「プロ」の人のことを紹介していて、面白く見せさせてもらいました。

 

「音楽事務所」とかに所属して、仕事を斡旋してもらっているようで、中には、ピアニストから「私はこの人じゃないとだめ」とご指名をうけるような人もいるそうです。

(※指名される譜めくりのプロに関わる、その名も、「譜めくりの女」というサスペンス映画もあります。いつかDVDを借りようと思っています)

 

ただ、「プロ」とは言っても、この仕事のギャラは「1回5000円程度」のものらしく、「譜めくりだけで生計を立てている」という人はいないそうで、他の仕事もしつつ、譜めくりもしている人が多いそうです。

 

ちなみに、「譜めくりはすべてプロ」というわけではなく、ピアノ教室の発表会などでの「譜めくり」は、たいていは、「生徒が演奏する時は、先生が譜めくりする」「先生が演奏する時は、生徒の中の上級者が譜めくりする」「先生の音楽学校時代の仲間がヘルプでやってきて譜めくりする」など、たいていは身内の中でまかなうものになっています。

プロの人をわざわざ雇うお金はありませんから、そうなるのが自然です。

 

さて、そのプロの人の仕事の様子をビデオで見せてくれましたが、「やっぱりプロは違うなあ」と思いました。

 

「コンサート会場の壁の色やピアニストの服装も考慮した目立たない服を着る」

「ピアニストが観客の拍手を受けている時に、こそこそっと登場し、指定の椅子に静かに座る。目立たない」

「無駄な動きがなく、的確なタイミングで立ち上がり、スピーディかつ正確にめくる」

「退場の際も目立たずに、するっと消える」

「表情が常に冷静」

 

いずれも「さすが」と思いました。やはり、、低額とはいえ、お金をもらっている「プロ」の仕事でした。

 

いっぽう、アマチュアの場合、「立ち上がって譜めくりするまでにすごく時間がかかって、譜めくりの人が目立ってしまう」「間違っていっぺんに2枚めくってしまって、小パニック」なんてことはよくあります。

 

ただ、音楽発表会の撮影では、「譜めくりのために応援に来てくれた大事な友達なので、その人の譜めくりの様子もちゃんと撮影しておいて下さい」と、先生に頼まれる場合もあり、その時は、ゆっくりと譜めくりしてくれると、写真は撮りやすいので助かります。

 

Youtubeではこんな映像もありました。

 

https://www.youtube.com/watch?v=N9gshNly-RY

(49秒あたりにご注目)

笑ってはいけませんが、笑ってしまいました。すいません。

一方、上手な譜めくりの例の動画もありました。

https://www.youtube.com/watch?v=OYKO2EtnZ84

 

 

さて、ここまでの文章は、音楽関係者であれば誰でも書けることかと思います。

 

ここからは、我々、裏方じゃないと知らない世界の話です。

 

実は、音楽演奏会の撮影スタッフの中にも「譜めくり」の人がいます。

特に、「ビデオ撮影のプロ」の場合は時々見かけます。

カメラを操作するカメラマンの横に、譜面を指先で追いながら見続け、小声で、「次、トランペットソロです」とか予告するのです。

これって、演奏者のソロ演奏が始まった時に、画面が、その演奏者の「アップ」の画角になっているように、カメラマンに教える役目なんです。

こういうことをやっている専門業者は、HPなんかに、「うちのスタッフは楽譜を読みながら、最適なアングルの映像を撮影します」とか、宣伝文句に書いてあったりします。

撮影する方も、「本当の上質なプロ」になると、こういうことをするわけです。(当然、料金も高くなりますが)

写真の場合は、「アルトサックスのソロが始まったな。じゃあ、アップを撮るか」と、瞬時にレンズをアルトサックスのほうに向けることができるので、楽譜を追うことはそんな重要ではありません。(もちろん、リハーサルの時に全曲を聞いて、「どのへんでソロ演奏がある」、といったことは頭に入れておきます)

 

 

また、会場内後方の「調整室」の中にいる「照明スタッフ」も楽譜を読みながら追っています。

(写真参照:実際はこのように明るくはありません。暗い中でやっています)

 

これは、照明スタッフは楽譜の中に、「ここからAタイプ照明」「ここからCタイプ照明」といった、照明のスタイルを曲の中で変更するための目印をつけていて、それを助手が、「次の小節からDです」などと、照明操作盤を動かすスタッフに教えているところです。

 

このように、裏方スタッフも楽譜を見ていたりするのです。

 

 

追記

その後調べてみたら、タブレット端末2面で譜面になっている機械を発見しました。

 

https://www.youtube.com/watch?v=NcZ1H2XRhnM

 

ただ、曲に合わせて自動的に楽譜がめくれるとまではいかなくて、めくる時に、一瞬手で画面を触れるようになってました。でも、それだけでも、ずいぶん楽かもしれません。

私の知っているジャズベーシストの人も、アイパッド1台に大量の楽譜のデータを入れておいて、ライブハウスなんかで客からリクエストがあった時でも、瞬時にその曲の楽譜を呼び出して、すぐに演奏を開始する、なんてことをやっていて、見ていてびっくりしました。

 

私が思うに、いずれ、ピアノの譜面台の部分が大きな液晶モニターになっていて、そこに譜面が映し出され、左足にスイッチがあって、左足をトンと踏むと、譜面がめくれる  なんてふうになるかもしれませんね。ハイテク時代ですから。スタインウェイで作らないかなあ?

 

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発表会撮影は雫写真事務所へ





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