パピとママ映画のblog

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陽だまりハウスでマラソンを ★★★★

2015年05月27日 | は行の映画
妻と老人ホームに入居した元オリンピックのマラソン金メダリストの老人が、ベルリンマラソン完走に挑戦する人間ドラマ。高齢を言い訳にせず生きがいや目標を見いだそうとする主人公を、ドイツで人気の喜劇俳優ディーター・ハラーフォルデンがこの役のために9キロ減量し体当たりで演じた。『ラブ・アクチュアリー』などのハイケ・マカッシュらが共演。実際のベルリンマラソンで撮影されたクライマックスシーンは迫力満点。

あらすじ:元オリンピック金メダリストとして有名なランナー、パウル(ディーター・ハラーフォルデン)は、妻の病気を機に二人で老人ホームに入居する。70歳を過ぎても至って健康なパウルは、つまらないレクリエーションや規則に縛られるホームに嫌気が差し、再び走り始めることに。ベルリンマラソン完走を目標に頑張る彼の姿を見て、当初はあきれていた妻や入居者たちも応援するようになるが……。

<感想>先週ミニシアターで観賞したものです。老いてなお共同生活の人間関係に、気をもまなければならない現実を目のあたりにするのは辛いですよね。若かりし頃のプライドと、現在進行形の生と、精神的肉体的な衰えを同時に抱える負荷は重いが、どれも捨てることはできない。

それを貫き通そうとすれば、和を乱すことに繋がるという現象がリアルに描かれている。老人ホームでの生活で、まだまだ自分は若いと自負しているパウル。介護師たちに子ども扱いされて怒ってしまう。そのパウルが昔取った杵柄のマラソン出場を決意する姿に、果たして本当に大丈夫なのだろうかと心配。
しかし、走りを撮影するのにスローモーションを使うのは果たして正解なのだろうか。それによっての、視覚的体感的な効果は得られているのだろうか。
これは脚本の予定調和が撮影で増幅されているようだ。老人ホームで、主人公に対立する人たちが、最後はどうなるかが簡単に予測できてしまうからだ。

つまりショットが脚本の説明でしかないのだ。表情重視の切り返しに、特にダメなのは、死んだ妻が夫の目の前に現れるシーンである。夫の肩ナメで撮っていること。しかもあの照明じゃ、単に俳優が後ろに立っているだけ。
マラソンも主観移動のスピードが全然合ってないし、トラックに入ってからは、正面の後退移動で撮影しているのには、虚構と教えているようなもの。
併走していた大勢のランナーが一瞬にして消え去り、主人公がただ一人、観客の拍手の松競技場へと戻ってくる感動のラストシーンは、明らかに嘘の映像なのだが、映画の構成なのだろうか仕方があるまい。
それにしても、監督の狙いが功を奏している。印象が爽やかで、スポーツを描いているからでもあるが、家族関係が情緒的にならず、個人主義的であるからだろう。主人公のパウルと、妻のマーゴの夫婦愛がとても素敵で、妻の死も愁嘆場とはならない。

ドイツ人的な理性と言っていいのかもしれないですね。「終活」という言葉を最近よくTVでも放送されているが、見事な「終活」映画になっていると思います。
日本では、そうはいかないと思うので。「年を取っても自分のことは自身が決めることだ」と、しかしいつまでそう思っていられるのか。認知症にでもなったら、自分ではその状態は把握できないから。身近にいる夫や子供たちの世話にならないように。きっとそうなったら、老人ホーム行きかもしれない。誰にも迷惑をかけないで一人で生きていくには限界があるもの。身近で切実な要素が詰まった、しみじみと感慨深い作品でした。
以前観た人生はマラソンだ!」でもそうでしたが、年老いてのマラソンレースに参加することは、絶対に自分で決めてはダメですから、かかりつけの医者と相談の上で、自分の心臓と相談して走ってください。
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