そこのみにて光輝く


『そこのみにて光輝く』 2013年・日本 


この世でいちばん許せないのは、自分。
そうやって生きている人間同士が出会う、そこからの時間。

函館の街、潮風の匂い、北海道訛り。
男と女と、家族。
彼らが暮らす、北国の短い夏。

描かれる事象は、意味合いがとても繊細だ。
軽々に扱えば、興味本位に終わってしまう。
下手を打てば、観客をも傷つけるようなエピソードの数々。

そんなギリギリを真摯に、かつ、深く抉り出すようにして描いている。
素晴らしい力量かと思う。


俳優は皆が皆、出色の芝居!
用意された言葉を喋っているようには思えない。

綾野剛が浮び上らせる、人物背景。

菅田将暉の芝居における反射神経が特筆モノで、眩しくって目をみはる。

男闘呼組・高橋和也の地に足のついた人間くささ。
火野正平の赤黒さ。

そして、池脇千鶴だ。なんと豊かなんだろう。
今作にリアリズムをもたらしているのは、この人だ。
あんな表情を見せる、相手役にあんな表情をさせる、唯一無二だ。

のちに自殺してしまった佐藤泰志の原作である。
高田亮の脚本は、一言の意味が重い。

呉美保作品を初めて観たけれど、相当な手腕だ。粘り腰だ。力強く、緩やかでもある。
今作で数多の監督賞を受賞されているのも、そりゃそうだろう!


こういうストーリーはおそらく演じるのも、作り上げるのも体力が必要だ。
海と汗と涙。
観終わった後に、瞳に焼きつく鮮烈。

彼らが今も、本当に函館で暮らしているような。
もがいているような。
どこにもない話のようでいて、どこの街にもあるような。

いつ、自分が彼らのようになるかもしれない。
そう感じてしまったのは、彼らが抱く情感の揺れが手に取るように伝わるからだ。

人間は、どうしようもない。
ともすれば嫌悪があふれるような状況に、光が射す。
輝きに満ちた映画だと、思う。



映画 WOWOW

[関連作品]
池脇千鶴 『ジョゼと虎と魚たち』『凶悪』『舟を編む』『うさぎドロップ』
綾野剛 『ガッチャマン』『天空の蜂』『ルパン三世』『白ゆき姫殺人事件』『その夜の侍』『るろうに剣心』『ヘルタースケルター』『うさぎドロップ』『あぜ道のダンディ』
菅田将暉 『映画 暗殺教室』



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