芸術とエンターテイメントの融合だ。
ぃや、狭間といおうか。
境界線にあるような映画だ。
マイナス20~27℃の中でのロケ。
ライトは使わず、自然光だけで撮られている。
景色はもとより、その息遣い、吐息から伝わる極寒だ。
アメリカ開拓史の時代。
生きようとする人間の魂が壮絶。
レオナルド・ディカプリオは水に浸かり、雪に埋もれ、走り倒れ、また走り。
生肉を食らい、おそらく本気で満身創痍。
功労賞ではなく病気モノでもない、渾身のアカデミー主演男優賞受賞である。めでたい!
トム・ハーディはこんなにも上手い俳優だったのか!←失礼
人物の陰影が浮き彫りに。登場する度にワクワクする。あの訛り。得難い。
隊長役のドーナル・グリーソンも、いい。
ネイティヴアメリカンの俳優陣も、いい。
若者ウィル・ポールターは『メイズランナー』に続いての活躍。あの眉毛は自前らしい。まじか。
アレハンドロ・G・イリャニトゥ監督は悪人の設定はするものの、生み出さないタイプ。
スピルバーグに近い。今回も圧倒的な演出。
『ライフ・オブ・パイ』のアン・リー監督と同様に、芸術とエンタメを束ねて昇華させる作業をしている。敬意だ。
アカデミー撮影賞を連続受賞したエマニュエル・ルベツキは、あの手この手だ。
高級POVだ、がぶり寄りだ。演者に近く遠く、ピタリとへばり付く。
それらを彩る坂本龍一の音楽は、エモーショナルであった。
大変な撮影だったことが伺える。
1日1時間だけの撮影を7ヶ月の順撮り。
俳優陣の体調コントロールも大仕事だったろう。
レオ担当シェフもエンドロールに名前が載るわけだ。
自分よりも大切なものを奪われた男が、死の淵から這い上がろうと闘う物語。
セリフの無い時間も多い。
その間、自然の音で劇場が満ちる。
鑑賞というよりも、同じ地平に連れて行かれるような体験。
シンプルなストーリーに、この臨場感。
人間が、人間たり得る理由がここにある。
そして本気で思った、熊は怖い。
スクリーン
THE REVENANT
2015年・アメリカ
監督・脚本・製作: アレハンドロ・G・イリャニトゥ
原作: マイケル・パンク
撮影: エマニュエル・ルベツキ
音楽: 坂本龍一
出演: レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン、ウィル・ポーター、フォレスト・グッドラック、ポール・アンダーソン、クリストッフェル・ヨーネル、ジョシュア・バーグ、ドウェイン・ハワード、メラウ・ナケコ
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督⇒バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
レオナルド・ディカプリオ⇒ジャンゴ 繋がれざる者/シャッターアイランド/タイタニック3D
トム・ハーディ⇒チャイルド44 森に消えた子どもたち/マッドマックス 怒りのデス・ロード/裏切りのサーカス/ダークナイト ライジング
※鑑賞の感想です。情報に誤りがございましたら御一報頂けましたら幸いです。