ラブストーリーのほんわかに笑い、一転、殺人の狂気に震撼する。
そして、泣く。
あらゆる感情を揺さぶられました、助けて下さい。
漫画コミックの映画化において問題になるのは、原作との同一性と整合性だ。
オリジナルに完全に立脚するのか。
それとも、映画独自のオリジナリティを持たせるのか。
この『ヒメノア~ル』は素晴らしい結果を生んだ。
古谷実の原作とは、メインの人物背景がまるで違う。
展開もテーマも描き方も違う。
それが、大いなる魅力になっている。
この映画には「森田くん」という強烈なキャラクターが必要。
しかし、原作の森田とは意味合いが異なるため、それをなぞるのではない森田像が生まれており、実に豊か。
演じる森田剛の狂気と正気の揺れが切なく、圧倒的だ。
森田剛は、ジャニーズの肩書きが評価の邪魔をしている1人かと思う。
役者として過酷な役柄を引き受けている。
軽々とした体躯がとても効果的だ。
絶賛されていた舞台『金閣寺』も観たかった。
濱田岳・ムロツヨシのペアは安定の面白さ!
可愛いの代名詞・佐津川愛美が意外に細身!ムチムチだと思っていた!ありがとう!
コメディとサイコスリラーの絶妙な合体である。
吉田恵輔監督は『さんかく』で最高なホラー描写をしてくれたけれど、今回はそれよりはサスペンス寄り。
ただし、スピードと重量感のある表現で強力だ。
ほのぼの時間と、狂気の空間。
その境目の見せ方が、鳥肌モノのカッコよさ!
映画ならではの説得力に、心を掴まれる。
原作漫画は、あの分量があるからこそ出来る群像劇である。
一方の映画では、焦点を絞り、個々の動機を分かりやすくした。
映画2時間内で描くべき事は、何か。
そこに注力した結果の、成功だ。
これは、『デスノート』の例にも通じる。
つまり、原作で描かれていない部分を補完しているのだ。
その場合、奥行きが広がることが多い。
本筋を変えていながら、本質の深いところまで連れて行ってくれる。
見事な実写化だと思う。
って、本日は徹頭徹尾、劇中の森田くんのようにド真剣。
今年の邦画は、本当に豊作です。嬉しい悲鳴。
スクリーン
2015年・日本
監督: 吉田恵輔
原作: 古谷実
出演: 森田剛、濱田岳、ムロツヨシ、佐津川愛美、駒木根隆介、山田真歩、信江勇、栄信、鈴木卓爾、山中聡、大竹まこと
[関連作品]
吉田恵輔監督⇒さんかく
※鑑賞の感想です。情報に誤りがございましたら御一報頂けましたら幸いです。