将棋ブームだ。
どの界隈にも天才が現れる時にブームが起こる。
この映画は、藤井四段が登場する前に描かれたマンガの実写化。
奇遇にも、破竹の天才にダブるような若者の青春だ。
人生=将棋。
どうして、この若者は将棋に生きているのか。
彼が背負うものは何なのか。
彼を囲む人々の心象をまじえ、懐かしくも新しい風景の数々。
羽海野チカによる原作コミックは繊細でありながら、力強いタッチ。
そんな印象を違わずに映像化している。
というかだ、激似ではないか。少し笑ってしまった。
これはどういうことかといえば、原作に対して尊重がある。
ファンに対して愛がある。ありがたい。
将棋しかない青年・桐山零役には神木隆之介。
このキャスティングで、映画は80%成功したも同然。
悩み、時に決断し、2歩進んで1歩下がる姿を演じて、鮮烈。
幼少期を演じた大西利空は、この歳にしてベテラン!
まるで神木隆之介の子役時代のよう。目を惹かれる。『ぼくのおじさん』も観たい。
出演者は多数。
倉科カナ、伊藤英明、豊川悦司、佐々木蔵之介の人格造形がいい。胸に残る。
染谷将太のぽっちゃりメイクの自然さに驚いて、アゴが外れた。
羽生善治がモデルの棋士役・加瀬亮は、出番とセリフの少なさに反して印象が深い。
NHK大河ドラマ『龍馬伝』で大いに名を上げた大友啓史監督。
今回は前編138分、後編139分という、いわば得意な長丁場。
正直、少々、長い。気がしますがどうですか。
そう感じたのは、クライマックスが多数、用意されているからかもしれない。
盛り上がり→カタルシス→あれ?まだ続いてる…っ!
これが、数回。
映画というよりも、ドラマ一気観の様相でもある。
などと、将棋盤の隅を突くようなことを申しておりますが、観終わった時の達成感。
何やら、桐山くんと共に戦ったような感慨深さがあった。
棋士と、将棋そのものを描いた『聖の青春』。
棋士と、将棋界を描いたのが『3月のライオン』。
その分、周囲にもフォーカスした作り。まさに人間模様だ。
生きるために次の一手を選び続けてきた青年、桐山零くんを心配し続ける4時間37分。
なお、日本各ロケ地の美しさ、殊に、山形の山寺こと立石寺は東北住みとしては格別!
劇中のあの場所までは、石段が1070段ある。
私事ながら当方は登る度に、もう二度と登らないと誓うほど。
ロケ聖地巡礼の方は、どうぞ水分を忘れずに。
スクリーン(TOHOフリーパスポート)
2017年・日本
監督・脚本: 大友啓史
脚本: 岩下悠子、渡部亮平
原作コミック: 羽海野チカ
主題歌: 藤原さくら「春の歌」
出演: 神木隆之介、有村架純、倉科カナ、清原果耶、新津ちせ、板谷由夏、前田吟、伊勢谷友介、染谷将太、佐々木蔵之介、加瀬亮、高橋一生、岩松了、斉木しげる、中村倫也、尾上寛之、奥野瑛太、甲本雅裕、伊藤英明、豊川悦司
大友啓史監督⇒ 『るろうに剣心』 『るろうに剣心 京都大火編』 『るろうに剣心 伝説の最期編』
神木隆之介⇒ 『君の名は。』 『バクマン。』 『神さまの言うとおり』 『るろうに剣心 京都大火編』 『るろうに剣心 伝説の最期編』 『桐島、部活やめるってよ』 『サマーウォーズ』 『SPEC 天/SPEC 翔』
※鑑賞の感想です。情報に誤りがございましたら御一報頂けましたら幸いです。