爆発音。
銃声。
響き渡る破裂音に身がすくむ。
怖い。
音楽も鳴らない。
硝煙が白く立ち込める光景に、生命の危険さえ感じる。
劇場にいるのに、だ。
2013年のボストンマラソン爆弾テロ事件は、記憶に新しい。
世界中の市民ランナー憧れのマラソン大会。
爆弾が仕掛けられたのは、歓喜と安堵に沸くゴール間近。
事件に耳目を引かれても、人の関心は移りがち。
このテロも、決着を知らないでいた方も多いかもしれない。
当方も知らず、アメリカのネットラジオが盛んに注意喚起を流していたことだけ、よく覚えている。
ストーリーも顛末も、ベースは実話だ。
事件から、わずか102時間で犯人逮捕に至った経過。
描かれる捜査員は、ほとんどが実在の人物。
こうして闘っていた人たちがいたのかと、ただただ驚く。
マーク・ウォールバーグは主演だけれど、出過ぎることがない。
大好きケビン・ベーコンがクールな情熱なので、ずっと見ていたい。
中国人役のジミー・O・ヤンはコメディアンらしいが、実に良い旨味!
ジョン・グッドマンやJ・K・シモンズが脇を占めるから、安心感。
ある兄弟の弟を演じたアレックス・ウルフの戸惑いが、いい。
御本人は芸能一家で、名家の出身らしい。無作為のアイロニーか。
ピーター・バーグ監督は一貫して、アメリカという国を描いている。
アメリカのリアル、価値観、働く市民の姿だ。
音響が常に最大の効果を上げる作風。
未見の方には、『ローン・サバイバー』も合わせてオススメしたい。同様の信念があるからだ。
実録として、秀逸。
サスペンスとしても、エンタメ性が高い。
群像劇のように視点は様々だが、主役はボストンという町である。
だから、この作品をして、アメリカ万歳映画だなどと軽んじるのは違う。
たとえば阪神大震災の神戸や、東日本大震災の東北。
古くは、敗戦後の日本。
土地そのものが傷つくことがある。
災禍に見舞われた一国が、一都市が、必死に乗り越えようとする姿だ。
誇りに思わない方が悲しいじゃないですか。
リアリティを重視しながら、公平性も含有。
右や左に寄り過ぎない。
犯人の生い立ちも知りたくなった。
これこそまさに、アメリカ人が目指すバランスだろう。
パトリオット・デイとは、愛国者の日。アメリカの祝日だ。
敵は、海の向こうにいるのではない。
アメリカが国内の敵に立ち向かい始めて、長い時間が経った。
問題の根深さは、この傑作を観るとよくわかる。
スクリーン
Patriots Day 2016年・アメリカ 監督・原案: ピーター・バーグ 脚本: ピーター・バーグ他 製作: マーク・ウォールバーグ他 出演: マーク・ウォールバーグ、ケビン・ベーコン、ジョン・グッドマン、J・K・シモンズ、ミシェル・モナハン、アレックス・ウルフ、セモ・メリキッゼ、ジェイク・ピッキング、ジミー・O・ヤン、レイチェル・ブロズナハン、クリストファー・オシェイ、メリッサ・ブノワ、ジェームズ・コルビー、マイケル・ビーチ、ビンセント・カラトーラ |
※鑑賞の感想です。情報に誤りがございましたら御一報頂けましたら幸いです。