ああ、だからIT(それ)なのか!と、途中で気づいて興奮。
スティーブン・キング、凄い。天才。神様。(今更
私事ながら、キングのビッグファンである。
と言いながら、原作『IT』未読の阿呆でよかった。(言い訳
知らずに観たから率直に楽しめた。気が。しないでもない。(だから言い訳
設定のうまさ、アイデアの秀逸さに卒倒。
その土台の上に、見事に花開いたホラー描写の数々である。
ファンの方はご周知のように、キング小説には3パターンある。
今回のようなバケモノ風は荒唐無稽になってしまいがち。
だがこの映画化は、相当なバランスの良さ!
一つ一つをちゃんと恐ろしげに見せている。
しかも、青春が合わせ技だから、清涼感さえ。
同じキング原作の傑作映画『スタンド・バイ・ミー』に近いと聞いていたけれど、確かに。
とある田舎町で子供が消える。次々に。
弟の行方を探す少年と友人達に襲い掛かる、恐怖現象だ。
アンディ・ムスキエティ監督は、傑作『MAMA』の人か!
やはり手腕が素晴らしい! 血液の粘りへのこだわりがたまらない。
子供を見る目の優しさは、『MAMA』から通底している。
色彩の美しさには見惚れるばかり。
ピエロ役ビル・スカルスガルドの全身芸と顔芸!
高速で突進してくるので怖いやら楽しいやらで、これまた、たまらん!
動きのキレ具合が五輪選手並みなので、CGを疑うレベル。
って、ステラン・スカルスガルドの息子さんか…! 道理で長身なわけだ。
主演少年ジェイデン・リーベラーをはじめ、少年たちも皆、好演。
各キャクターも『スタンド・バイ・ミー』に寄せている風。
弟役ジャクソン・ロバート・スコットの可憐さと熱演。
紅一点女子役ソフィア・リリスもとってもいい!
そばかすがテイタム・オニールを思わせる、絶妙なティーンエイジャー。
映像が素敵な色合いなのだけれど、チョン・ジョンフンであった!
パク・チャヌク監督が『イノセント・ガーデン』で韓国からハリウッド進出した際に、帯同したカメラマンだ。
『ドリーム』に続いてのベンジャミン・ウォルフィッシュ音楽は『ハリー・ポッター』シリーズのようでもあり、胸が躍る一方。
80年代である。
殊に我々、中年世代には懐かしさのオンパレード。
どこにでもあるような町だ。
中学生だから皆、アホだったり恋したり。
その中に現れては去る、恐怖の時間。
恐怖シーンは一気に押し寄せてくれるので、ワクワクが止まらない。
ホラー過疎地の当地・秋田でも、劇場は若者でいっぱいであった。
彼らは悲鳴を上げていた。
まるで、ホラー・サーカス。
コレだコレ! なんというエンタメなんだ!
ただ、今作が怖いか怖くないかは、大いなる個人差。
原作のモデルとなった、1970年代にピエロ姿で子どもを誘拐・殺害した連続殺人犯ジョン・ゲイシーを知っていると、恐怖はより膨らむかもしれない。
では、もう一方の十代の思い出はどうだろう。
多くの人が思い返すのではないか、後悔や痛みや甘酸っぱさを伴って。
どんな家庭、学校であろうとも、だ。
そこで生きていかなければならない少年少女時代。
恐怖体験に晒されつつも、その中でもがく子供達の姿も切ない。
今作は第1部であり、この後に第2部が控えているらしい。
彼ら少年少女がこの先どう成長し、どう立ち向かうのか、とても楽しみだ。
スクリーン
IT
2017年・アメリカ
監督:アンディ・ムスキエティ
原作:スティーブン・キング
撮影:チョン・ジョンフン
音楽:ベンジャミン・ウォルフィッシュ
出演キャスト:ジェイデン・リーベラー、ビル・スカルスガルド、ジェレミー・レイ・テイラー、フィン・ウルフハード、ソフィア・リリス、ワイアット・オレフ、チョーズン・ジェイコブズ、ジャック・ディラン・グレイザー、ニコラス・ハミルトン、ジャクソン・ロバート・スコット
※鑑賞の感想です。情報に誤りがございましたら御一報頂けましたら幸いです。