「バルカン超特急」はサスペンスの元ネタ集【ネタバレなし感想】 | キタコの世界映画博

キタコの世界映画博

映画は友達
全ジャンル感想ブログ
ネタバレは避けつつ
時々ネタバレ考察しています

バルカン超特急

 

ヒッチコックというアイデア帳

タイトルの印象から、硬派なサスペンス・アクションを想像していたわけである。

ところが、ミニチュア背景から始まる冒頭は、コメディの趣。

宿屋に足止めされた旅行客たちの、ドタバタである。

なかなか汽車にも乗らない。

乗ったところで、のんびりとしている。

お茶なんて飲んだりして。

 

そもそも、そんなに超特急でもなさそうである。

まさか、このまま目的地に到着してしまうのでは。

別の意味でハラハラしてくるわけだ。

ところが、だ。

乗客が寛ぎ始めて数分後。

たった一つのセリフで、状況が一変した。

 

えっ!と声が出てしまったかもしれない。

ごくありきたりな汽車の旅が、一瞬で緊迫した。

当方、尻をかきながら眺めていたのに、思わず身を乗り出してしまった。

うそ…!と腰が浮いた。

流石というより他にない。

これぞ、ヒッチコック作品。

 

今作ととてもよく似た映画が、思いつくだけでも何本もある。

いずれも元ネタはコレだなと、今頃になって気づいて恐縮です。

ミッシング系アイデアの出発点は、たぶん、ココ。

 

走行する汽車という密室から、一人の女性客が消えるのだ。

彼女は、どこに行ったのか。

 

 

ロマンスと時代性をひとつまみ

架空の国からイギリスへの、道中である。

アクションとサスペンス、そしてミステリー。

汽車には、多国籍な人々が乗車中。

食堂車やコンパートメントが並ぶ車内は、豪奢。

車両ごとの違いも興味深い。

 

全編にユーモアも漲っている。

荒唐無稽にも思えたが、実は、核心部分はシビアだ。

今作が公開された1938年というと、ナチス・ドイツがオーストリアを併合した年である。

ヨーロッパに不穏な空気が流れていた時節。

 

そんな時代感も同乗させて、バルカン半島を汽車は進む。

ミステリー部分もいま観ると見慣れたトリックに感じるのも、ここから模倣が生まれたからこそ。

ロマンチック・サスペンスの走りでもあろう。

 

 

キャストとスタッフ

混乱に巻き込まれる乗客が、大層な美女!

マーガレット・ロックウッドはイングリッド・バーグマンにも似て、勝ち気で早口な役柄にピッタリ。

 

美女に助力するイギリス男が、マイケル・レッドグレイヴ

リーアム・ニーソンに似ており、怪しいチョビ髭のせいで最後まで疑わしい。

 

消えた淑女を演じたメイ・ウィッティが、なんという温かみ!

英国女優で初めて、国から勲章を授与された方らしい。

思うに、のちの007のあのキャラクターもここからか、と思ったり。

 

アルフレッド・ヒッチコック監督の、イギリス時代の代表作。

スクリーンを使っての特殊撮影の数々だ。

撮影方法が分かっていてもハラハラするのだから、恐れ入る。

当時、ヒッチコック監督は39歳。若っ!

熟練の技までは到達していない様子が、逆に新鮮だ。

 

 

邦題は水野晴郎製

原題は「消えたレディ(淑女)」で、ある小道具にちなんでいるのだけれど、それをまるっきり変えた邦題『バルカン超特急』もカッコよすぎて、悶絶。

誰が邦題を付けたかといえば、そう、Mr.シベリア超特急、水野晴郎大先生である。

 

映画の天才・ヒッチコックと、邦題の天才・水野晴郎。

映画を観た!という充実度が、とても高い。

ぃやあ、クラッシック映画って本っ当に良いもんですね。

 

 

 

映画 WOWOW

 

ブログランキング・にほんブログ村へ←記事がお気に召したらクリックして下さいませ

←←ポチッとこちらも参加してます

 

『バルカン超特急』
The Lady Vanishes
1938年・イギリス
監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:エセル・リナ・ホワイト
撮影:ジャック・コックス
美術:アレックス・ベチンスキー
出演キャスト:マーガレット・ロックウッド、マイケル・レッドグレイヴ、ポール・ルーカス、デイム・メイ・ウィッティ

 

色んな映画を観ています↓ブログ内の記事索引です

宇宙人 映画タイトル50音順

 

   ブログランキング・にほんブログ村へ
 

※鑑賞の感想です。情報に誤りがございましたら御一報頂けましたら幸いです。