同じイタリア人で、日本でもアイドル的人気を誇ったジリオラ・チンクェッティと同じ60年代後半にデビューした大ベテラン歌手パッティ・プラヴォの2009年作です。

 最も活躍した時期は70年代なのですが、その美しい容姿からは考えられないドスの効いた低い声に誰もが驚かされるだろうというくらいのギャップのある人なのですが、近年になっても現役でやれているのは、むしろこのドスの効いた声のおかげと言ってもいいくらい、ここでは声の魅力が際立っています。

 音楽的には実験的な部分もありつつも、基本は王道ロックと言った感じで、70年代のイメージとは全く違う路線へと行っています。本人的には、打ち込みなども多用し、ものすごく振り切ったことをやろうとしたのかもしれませんが、その要素に関してはむしろ丁度いい塩梅程度で、そのことでこのドスの効いた声が引き立っているんですね。

 この時点で60歳を超えてからの録音なわけで、こういうアルバムというと、他に思い浮かぶのはナンシー・シナトラが、ソニックユースなど色々なロックミュージシャンとロックをやったアルバムがありますが、全体の統一感、ハマり具合ではパッティ・プラヴォのがカッコいいです。

 実際90年代後半以降は、この路線でやってきているようですから、「とりあえずやってみました」という域のものでは
なくなって、かなりこのジャンルに入ってからも成熟してきているからだと思います。やっているのは大御所ですが、若い人にぜひ聴いてもらいたい活き活きとした一枚です。