我が家の家紋、そして名字の由来、これらは祖父祖母の世代くらいまでは当たり前に伝えられ、そしてお家の儀式のときには目にしたり耳にしたりするものであった。しかし、法事が簡略化され、家族の世代間別居が進んできた今、ファミリーヒストリーで紹介されるような数世代前のご先祖やその名前の由来さえ知らない人が増えてきているのではないだろうか。本書を読んでも、自分の家の由来がわかるわけではないが、それでも、興味を持つきっかけにはなる。家の歴史は住んでいる地域や地区の歴史にもつながる。日本歴史を身近に感じるきっかけにもなることがあるかもしれない。
名字は古来の豪族名、職業名、地名などから始まり、同一地域内での区別、分家、政府からの通達などで細分化されてきたという。本書では武家の名字を中心に、名字の歴史をおさらいしたうえで、現代社会での家紋の使用と名字のランキング、上位名字の由来などを解説。家紋については、植物、動物、自然現象、日用品・器物、文様に分類して紹介、そのバリエーションの増やし方についても例示している。
名字に関しては、最近はテレビでの紹介事例も増えて目にする機会が多いが、家紋については名字と同様の数多いバリエーションがあることを知った。また県、市町村の章、社章、校章、歌舞伎役者の紋なども紹介しているのが面白い。家紋のほとんどは黒、しかし明智光秀の水色桔梗だけが水色だというのも発見である。
Kindle版で格安だったから、という購入動機ではあったが、一読の価値はあった。