意思による楽観のための読書日記

おじさんの功罪

四十を越えるとおじさんだ、とも言えるだろうが、ここでは六十歳を越えて、特にサラリーマンの定年後の人生を過ごしているまだまだ元気、しかし多くの自由な時間を持つ男性のことである。

電車通勤がなくなり、アホな上司もいないので、この歳で会社をやめて良かった、と思う一方、可能なら世の中のためになることをしたい、と力を入れようとしても、そんなことはそうそう向こうからは来てはくれない。お金と健康な体さえあれば、リタイアメント後に必要なのは自己満足も含めた生き甲斐、と言うのが通り相場。NHKのシニアの特集などを見ていれば反論ができないほどの正論が大多数であるかのように感じてしまう。それは皆の本音なのだろうか?

おじさんは、今まで長く働いてきたのだからと言い訳しながら、時に学生時代の仲間と酒をのみ、会社時代の同僚達とも情報交換と称する飲み会で楽しんだりもする。年に数回は妻と旅行だってする。人によっては少年野球のコーチ、バンド活動、お遍路の旅やオートバイで温泉ツーリングにも行くだろう。

ひまなおじさんの時間潰しと言われても、こうした楽しみだって、健全な消費活動であり、ある意味でのシニア世代から現役世代へのの所得移転であるし、ひょっとしたらちょっとした経験談や若い人との会話の中から新たなビジネスのアイデアが生み出される可能性だってある。

自宅で邪魔者扱いされないようにできることは、地元のボランティア活動に力を入れるのもよし、水道の水漏れ修理、照明をLEDへ変更、たまには夕食の用意、窓のお掃除などなど。しかし、ボランティア活動にも流儀や主張があったりしてやりにくい。自宅の台所の主導権は私にはなく、しょせんはお手伝い。なんとか自分にしかない価値を発揮したいと考える。

色々とトライするが、自宅で過ごす多くの時間帯に、生産的な活動を継続することは家庭菜園などの農作業以外にはなかなか見つけられない。料理を習って、ワインにも凝って、お出汁の蘊蓄を傾けるのも悪くはない。学生時代にやっていた音楽も老化防止には効果的だ。特に楽器演奏なら、成果の披露も可能。

しかしいずれも文化的活動ではあるものの、プロのレベル迄いかなければ、生産的な活動ではない。そう、アマチュアながらも何かを作り出して、世の中のためにならないのかと考えているおじさんは私以外にも多いのではないかと私は考えている。

野菜、家具、お客様にお出しできる料理、素人でも可能なさまざまな生産的な活動があるはずだ。一次産業なら自宅で消費ができるので、手っ取り早い。二次産業では、販売ルート開拓のハードルが高いがやりがいは大きいだろう。三次産業なら、家庭教師や小さなレストランが思い付く。

こうしてテレビでよく紹介される「人生の楽園」が理想的、と考えたこともあったが、本当にそれをやり抜くにはパートナーの協力と相当の実行力が重要である。

ここで再度考える。おじさんでも自分にしかできないことがあるのではないか。実家の母から電話をもらい気がついた、それは親のこと。2ヶ月に一度、家族をつれて行き二三日過ごすのではなく、もう少し一緒にいられるのではないかと。

義理の母は三年前から介護施設に入居し、昨年来は自分の子供の顔さえ認識できなくなってしまった。自分の親はいつまでも元気でいると思い込んでいたが、親がまだ心身ともにそこそこ健康でいるなら、まずは年老いた親の実家で、家の片付け、病院への送り迎え、可能な範囲での食事の世話、お花見に連れ出すなど、これは確かに自分にしかできない活動である。

実行力不足から、家庭菜園での作業に終始しているのなら、まだ家にいる親との時間を有効活用すること、ここから始めたらどうかと考え、今年の初めからは自宅から遠く離れた実家で大半の時間を過ごしている。

自宅に私がいなくても、残る家族は何の問題もなく、かえって喜ばれているし、実家の近所の人達も息子が家に居てくれれば安心だ。親戚の皆さんも、親孝行じゃないか、と少し私の株も上がる。

農作業開始までのしばらくは、焦って生産活動をしなくとも自己満足はできるし、実家の狭い庭にだってその気になればトマトくらいなら作れるかもしれない。首から上はまだまだ元気な親なので、ずっと一緒にいるとうるさがられるし、付かず離れずでマメに顔を出す、ということにしようかと思う。おじさんの功罪についても、これでしばらくは結論の先のばしができると考えている。

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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