意思による楽観のための読書日記

苗字に生きるやまとことば 丹羽基二 ***

地名や苗字は日本古来の大和言葉に由来するものが多く、音読みの地名や苗字もあるが元をたどれば大和言葉であるということ。

いちいちそのことを証明するのは煩雑なので、例えば戦後歴代の総理大臣の苗字から調査。
1. 東久邇 久邇は山城の国相楽郡の久邇で聖武天皇の恭仁大宮からきていて久邇は当て字だそうだ。クニとは土地の境界をさす大和言葉で地名に由来する苗字。
2. 幣原 京都府八幡市幣原に由来、シデとは落葉樹の名前でその木が生えている原っぱだが、注連縄に掛けて神を祀る原を意味して神官の苗字だった。
3. 吉田 キチダもあり元は植物の葦、芦は悪いに通ずるので吉とした。田のつく三大苗字田中、山田、そして吉田。
4. 片山 中国地方特に岡山に多い地名由来の苗字。
5. 芦田 湿地帯に生える芦、葦、葭などからきている。
6. 鳩山 全国に1000名ほどしかいない珍しい苗字。埼玉県に鳩山という地名がある。
7. 石橋 元は地名ではなく建造物の石橋から来ている。しかし橋梁から転じた地名由来とも言える。
8. 岸  美作、阿波、武蔵野の流れで地名由来。
9. 池田 山の傾斜地に田を作るときには池も作る、だから池田。美濃国土岐郡、摂津の池田村、尾張池田氏などで地名由来。
10. 佐藤 日本最多の苗字で藤原氏の流れ。例えば下野佐野の藤原で佐藤。苗字の中では音読みになっていると分類できるが藤原氏の流れであるので元々は氏名、佐野は地名と考えられるので地名と氏の混合。
11. 田中 近畿、中国、北陸、北九州に多く見られる水田開発の中心的存在だった苗字であり地名由来。
12. 三木 讃岐、阿波、上野、播磨、三河にそれぞれ源流があるが元々は御木、神木のことで神の依代を指すが、後には御器で神に供える酒器製造なども意味した。植物、地名両方の由来。
13. 福田 豊かな田んぼ、吹田、湿田(ふけた)もある。地名由来。
14. 大平 大比良、大比羅もある。下野都賀、土佐、薩摩に先祖があり地名由来。
15. 鈴木 関東、東北に多い佐藤についで全国2位の苗字。原意は聖なる木で田畑に建てる一本の柱でこの神事を司る神官が鈴木姓の由来。信仰に由来する苗字。
16. 中曽根 信濃、上野などに源流があり石塊が多い硬い土地で川岸などを意味する地名由来の苗字。
17. 竹下 竹の下の根が張り巡らされた安全な土地という地名由来。
18. 宇野 広い土地を意味し大和宇智郡宇野、周防吉敷郡宇努、信濃小県郡海野などが先祖で地名由来。
19. 海部 海人族、海神社の神を祖神とする大和族の根幹をなす一族。海部を称する以外にも尼、天、雨、海など多くの苗字に痕跡を留める。
20. 宮沢 長野に多い神の山から流れ出る谷川を意味する地名由来の苗字。
21. 細川 広い川に対応して付けられた地名由来の苗字。
22. 羽田 ハネタ、ハダ、ハタで粘土に近い土、泥田が原意。地名由来。
23. 村山 伊勢神宮の神官、清和源氏土岐氏族、桓武平氏村山は武蔵七党の一つ。地名由来。
24. 橋本 橋のたもとには市が立ち交易が起こって集落が開ける。和泉国日根郡、山城の国綴喜郡などを源流とする地名由来の苗字。
25. 小渕 山や川の縁で水が淀んでいる場所。地名由来。
26. 森  杜、毛利、守、護、盛、茂里、母里などの表記もある。神が守るという信仰に由来するものが多い。
27. 小泉 清水のわきいでる場所、日本の国添下郡小泉、信濃の国小県郡小泉、常陸の国那珂郡小泉、越後の国岩船郡小泉など地名発祥の苗字。

以上をまとめると音読みは佐藤と海部、地名以外は石橋、三木、鈴木、海部となり、大和言葉由来が9割以上、地名由来も約9割となる。しかし解説でもあるように音読みや地名以外でも地名との混合であったり、転じてその苗字ということを考えればわれわれ日本人の苗字のほとんどは大和言葉であり地名由来であると言える。例外で音読みだけの苗字を探してみると次の通り。
御免、国眼、興梠、雲南、纐纈、海音寺、牛腸、立仙、左衛門三郎、長宗我部など。愛嬌、一品、下駄、都賀、天童、東京、南部、富士、二瓶、法願、茗荷、由比、冷泉などなど例外もあるがいずれも珍しい苗字である。

地名に残る大和言葉で漢字と読み方が異なるものが幾つかあり、枕詞由来だと説明されている。
春日、飛鳥、長谷川、日下など、そのそれぞれにも由来はあるが省略。

都道府県名で音読みは北海道、東京、岐阜、京都、兵庫。和語の当て字とされるのが群馬、愛知、滋賀、奈良、高知、佐賀。それ以外は訓読み。高知は河内の当て字、佐賀は坂の当て字だそうだ。愛知はアユチで熱いお湯の出るところ。奈良は平らにならすから来ている説や古代朝鮮語のナラ(国)から来ているという説もある。阿波は粟がよくとれた場所で旧藩主蜂須賀茂韶の居城の徳島を県名とした。当て字には良いとされる字が使われる。都道府県と同じ苗字は47種類すべて存在するという。

東海道53次、日本橋と三条大橋は含まれない。その中で苗字にはないのは保土ヶ谷、石薬師。それでも、三条、大橋、程谷、石、薬師はそれぞれ苗字にもあるのですべて存在するとも言える。

難読苗字は数多い。読み方がわかるかどうか、カナ漢変換ででてくるものを書いてみよう。
一口、歌枕、六平、百笑、三五月、十八女、心像、間人。

いもあらい、かつらぎ、むさか、どめき、もちづき、さかり、こころやり、たいざ。

京都の芋洗い稲荷がある地名が一口。葛城郡は歌枕としてトップ、歌つなぎに由来。六平は平らなのにサカとは無坂から平坦なということという説がある。百目鬼、百目木、轟などドメキの異字であるが、四国は四万十川の水流がトドロキわめく当て字だという。満月になるのは15日目、三五15で望月から来ている。女の盛りは18歳。秋田県泉北郡にある地名の心像、心を開放してさっぱりるすこと。京都府民は知っている、間人、海水浴場があるがいまは間人ガニで有名。穴穂部皇子の名前が間人媛で政変があって退座した時に流れた先がここ。

大和言葉を大切にするには地名と苗字を大切にする必要があるというお話。


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